「辛くてもバッターボックスに立ち続けないと」
――1億円の出資を受けて以降も、経営の相談をする機会などはありましたか。
藤田 悩み相談を聞くくらいですかね。
小川 今でも忘れられないのは、20年10月に「代表を辞めて会長職に就く」と報告しに行った時のことです。コロナ禍に始めたフードデリバリーの新規事業が軌道に乗らず、自信を喪失していました。でも会社は物流業界に光明を見出し、代表の僕がいなくても回るようになっていた。悩んで出した結論は、タイミーを1兆円企業にするのは別の人間に任せ、自分はデリバリーのようなゼロからイチを作る事業にトライし続ける、というもの。そのことを藤田さんに伝えたんですが、「君は“ゼロイチ”を繰り返すだけの経営者なのか。でもホームランを打とうと思ったら、本当に1兆円企業をつくりたいのだったら、どんなに辛くてもバッターボックスに立ち続けないとダメだ」と。この言葉でハッと目が覚めました。
「めちゃくちゃ刺さりました」
藤田 僕自身、小川くんと同じ経験をしてきましたから。ネットバブルが崩壊した当時、「藤田はゼロから会社を作ることが得意だから、経営者は外部から招けばいい」とか言われました。でも、ネットビジネスを理解できる経営者なんてどこにもいなかったですし、自分が成長してやるしかないと思って今に至るので。“ゼロイチ”が得意な起業家は、M&Aで会社を売却しがちです。もちろん、それはそれでいいですが、「小川くんも、そっち側に行くの?」という感じでした。
小川 めちゃくちゃ刺さりましたね。自分はどんな経営者になりたかったのか、改めて考えるきっかけになって。藤田さんから頂いた言葉を胸に、すぐに経営陣に前言撤回を伝え、ありがたいことに僕のワガママを受け入れてくれました。経営者として、覚悟を入れ直したタイミングですね。
藤田 もう上場企業社長歴は25年になるので、挫けるタイミングもよく分かりますよ。社内から大して信用されていないと気が付くこともある。でも、そこを乗り切らないとね。
◇◇◇
この続きは「週刊文春 電子版」で公開中。ベンチャー経営の秘訣のほか、投資の極意、趣味に全力投球する重要性、炎上やSNSとの向き合い方、さらには藤田氏から小川氏への“ツッコミ”に至るまで、他では読めない本音炸裂の“師弟対談”となっている。
〈「エネルギー総量を保ち続けろ」タイミー小川嶺代表(27)がサイバー藤田晋社長に言われた“金言” 《本音炸裂の“師弟対談”》 に続く〉
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