大阪アジアン映画祭の役割とは

リム 台湾映画も今年は2本入っていますね。そのうちの1本『我が家の事』(25年)はワールドプレミアですね。

©大阪アジアン映画祭

暉峻 今年は20周年という記念すべき年ですが、これまでの積み重ねがあったからこそ実現した作品もあります。この映画の監督は、過去2年連続で大阪アジアン映画祭に短編作品を出品しており、今回ついに長編デビューを果たしました。彼自身も、大阪アジアン映画祭での上映に間に合うよう、制作を進めてくれました。また、セールス会社は昨年公開された『本日公休』を手がけた会社であり、同作品が大阪アジアン映画祭を皮切りに日本で成功を収めたことが、今回のワールドプレミアにつながりました。

©2025 Key In Films  Ltd./figcaption>

 【我が家の事】

ごく普通の家族の歴史に脈々と引き継がれる秘密。その秘密によって苦しみ、引き裂かれ、再び結ばれる姿を、家族それぞれの視点から丁寧かつ滑稽に描く。

暉峻 もう1本、韓国映画『その人たちに会う旅路』(24年)にも似たような経緯があります。昨年、短編を出品した監督がすぐに長編を撮り、今回がその長編デビュー作となります。

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【その人たちに会う旅路】

スヨンはデートアプリで男性を漁ってはモーテルへ行く恋愛小説家。ある日、学生時代の先輩に10年前性加害をした教授を告発しようと誘われる。スヨンの複雑な心を繊細に描く。

リム 大阪アジアン映画祭に短編を出品した監督が、その後長編を撮って再び大阪に戻ってくるのは素晴らしいですね。今年も、大阪と縁の深い監督たち、例えば台湾のトム・リン監督が『イェンとアイリー』(24年)、ヤン・ヤーチェ監督が『破浪男女』と、新作を持って帰ってきてくれます。

暉峻 そうですね。まさに20周年という記念すべき年にふさわしいラインナップになったと思います。あとは、リムさんが作品を出してくれたら完璧だったんですけどね(笑)。

©Bering Pictures

 【イェンとアイリー】

同じ顔を持つふたりの女性。イェンは母を守るために父親を殺し、アイリーは演技のレッスンを通して自分の生き方を模索する。母と娘の運命を主軸に、静謐なモノクロ映像がふたつの時間軸を交錯させていく。キミ・シア、ヤン・グイメイ主演。

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 【破浪男女】

『人魚姫』の人魚を少年とした再解釈版。親密さやアイデンティティが断絶された世界で繋がりを求めることの複雑さを、台北のセックス・シーンを背景に大胆に描く。OAFF選出『GF*BF』『血観音』のヤン・ヤーチェ監督最新作。

暉峻創三 てるおか・そうぞう 1961年生まれ。映画評論家。2002年東京国際映画祭「アジアの風」部門の選定プロデューサー。09年より大阪アジアン映画祭のプログラミング・ディレクターを務める。

リム・カーワイ 1973年マレーシア生まれ。映画監督。大阪を拠点とする。「週刊文春CINEMA」で「香港からの手紙」を連載中。