コンペ部門には新しい国の映画が増えている

リム 例年に比べて、今年はコンペ部門の本数が少ない印象を受けますね。特に、フィリピン映画や日本映画が例年より少ないのが気になります。

暉峻 確かに、これまでコンペに入選していた国の作品が減る一方で、新しい国の映画が増えています。例えば、カザフスタン映画がコンペに入るのは珍しいですね。『愛の兵士』はエンターテイメント要素の強い作品ですが、『バイクチェス』(24年)はアート系。それでも、非常に面白くて自由奔放な映画です。この作品を観ると、カザフスタン映画が新しい時代を迎えたことを実感できます。また、バングラデシュ映画がコンペに入るのも今回が初めてだと思います。

【バイクチェス】

テレビ局の記者として働く主人公は、仕事に恋愛に充実の毎日を送っていた。しかしプロパガンダになっていく報道、妻のいる男との恋愛、レズビアンで活動家の妹の面倒に次第に疲れていく。鋭い視点とブラック・ユーモアで描く人間ドラマ。

暉峻 今年、最も大きな変化が見られるのは日本映画ですね。ここ数年、コンペ部門に選ばれる日本映画は2~3本ありましたが、今年は1本に減っています。

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 これまでコンペ部門やインディ・フォーラム部門には若手監督の作品が多く、ベテラン監督の作品は少なかったのですが、今年は応募の段階から有名監督の作品が多く集まりました。本来ならメジャーな映画会社で商業映画を作れる監督たちが、インディーズ的な手法で映画を制作する傾向が強まっているんです。

 その結果、今年はベテラン監督の作品をコンペではなくインディ・フォーラムで紹介することにしました。例えば、足立紳監督の『Good Luck』(24年)はコンペでも十分通用するレベルですが、あえてインディ・フォーラムに入れました。クロージング作品となった高橋伴明監督の『「桐島です」』(25年)も、同じくインディ・フォーラムでの上映となります。

 一方で、カザフスタンやモンゴル、バングラデシュといった国々の作品を取り入れることの方が重要だと考えました。

©2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

【Good Luck】

吉山太郎は自主映画を作る自称映画監督。自主映画のコンクールに入選し大分県に行くが、上映会で映画を厳しく批判されてしまう。翌日、太郎は昨日の映画を偶然観に来ていた砂原未希という女性に出会い、2人で1泊2日の小さな旅に出る。

©北の丸プロダクション

 【「桐島です」】

連続企業爆破事件に関与したとして指名手配され、49年もの逃亡の末、2024年に70歳で死亡した桐島聡。彼の知られざる半生を、報道・史実を元にフィクションを織り込んで描く社会派エンターテイメント。主演を毎熊克哉が務める。