大統領妻との「ただならぬ関係」

 韓氏は、尹氏の検察時代の後輩で、「尹氏の懐刀」として法相に就任した。ところが、韓氏は2024年4月の総選挙を前に、与党勝利のためには、様々な疑惑にさらされている金建希氏の国民に対する謝罪が必要だと主張。妻を守りたい尹氏との間で激論になった。それ以降、尹氏と韓氏の間には隙間風が吹いていた。

大統領の妻である金建希氏 ©getty

 また、12月10日には金建希氏の疑惑を追及する特別検察官設置法案の採決が迫っていた。国会の3分の2の賛成で可決された場合、尹氏は設置法の再議決要求(拒否)ができない状況に追い込まれる見通しだった。当時、「国民の力」は108議席。8人が造反すれば、可決される。韓東勲代表のグループは20人前後と言われていた。

 3日午後10時23分、尹錫悦氏が戒厳令を布告する記者会見を、韓氏らは国会近くの党本部で見ていた。韓氏は戒厳令の発表から10分後には、自身のSNSに「戒厳令反対」の立場を示していた。

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 これに対し、秋氏は「もう少し、議員が集まってから移動しても良いのではないか」と伝えたが、韓氏は「今すぐ出る」と言ってきかなかった。そこから歩いて5分ほどの国会議事堂に向け、韓氏は自分に近い議員や職員ら十数人を連れて党本部を出た。

 ちょうどそのころ、30分間ほどは、国会議員や党職員は身分証さえ見せれば、議事堂内部に入れる状態だった。韓氏は国会議員ではないが、そのまま一直線に本会議場に飛び込んだ。自身の身の危険を感じての行動だったとみられる。そこには野党「共に民主党」所属議員らが大勢集まっていて、韓氏を拍手で出迎えた。