「全国犯罪被害者の会」を立ち上げて被害者の権利拡大に努め、95歳で亡くなった岡村勲弁護士が、森友事件を巡る財務省の公文書改ざんで夫を亡くした赤木雅子さんについて、「改ざん」という犯罪の被害者と受け止め当初から支援していたことが明らかになった。
岡村弁護士が「あなたは勝ったんだよ」
赤木雅子さんの夫、赤木俊夫さんは財務省近畿財務局の職員として、2017年に発覚した森友学園への国有地巨額値引きに関わる公文書の改ざんを上司に命じられ、それを苦に翌年、命を絶った。雅子さんは真相を明らかにするため2020年、国などを相手に国家賠償を求める裁判を起こした。
一方、岡村勲弁護士は、顧問先の会社を一方的に恨んだ男に妻を殺害されたことをきっかけに「全国犯罪被害者の会」、通称「あすの会」を2000年に立ち上げた。会は犯罪の被害者や遺族の救済と権利拡大を訴え、刑事裁判への被害者参加制度の実現に大きな役割を果たし、2018年にいったん解散した。その後、雅子さんが裁判を起こしたことを知った岡村弁護士は、雅子さんに連絡を取って励ましの言葉を伝えた。これをきっかけに岡村弁護士は電話でたびたび雅子さんと言葉を交わすようになる。
2021年に国が“認諾”という異例の手段で賠償だけ払って雅子さんとの裁判を強制的に終わらせた時は、自らの事務所で雅子さんと面会し、「あなたは勝ったんだよ」とねぎらいの言葉をかけた。
近く開かれる「偲ぶ会」に参列し、感謝の気持ちを
この時、雅子さんは「真相がわからないままなのになぜ勝ったことになるのだろう」とピンとこなかったという。しかし翌年「新あすの会」の結成集会に参加し、何の救済もなく説明も得られない被害者が大勢いることを知って、「賠償を受けて真相解明の闘いを続けられる自分は恵まれている」と、岡村弁護士の言葉が腑に落ちたという。
雅子さんは国家賠償訴訟とは別に、財務省に情報不開示を取り消すよう求める裁判を起こしていた。一審では訴えが退けられたが、控訴審の大阪高裁で今年1月30日、「不開示決定を取り消す」と逆転勝訴の判決を勝ち取り、石破茂首相が上告断念を決断して勝訴が確定した。この経緯は国会でも取り上げられ、傍聴に訪れた雅子さんが国会内で石破首相と言葉を交わす場面もあって大きく報じられた。
そのさなか、岡村弁護士が肺炎のため2月24日に95歳で亡くなったことが、3月3日になって報じられた。訃報を知った雅子さんは、近く開かれるという「偲ぶ会」に参列し、これまでの支援に感謝の気持ちを伝えることにしている。