極夜に閉ざされた南極基地で、同僚女性との結婚を控えていた32歳の天体物理学者が、原因不明の体調不良の末に急死した。半年後の検死で判明した死因は猛毒メタノールによる中毒死。自殺か事故か、それとも他殺か――。完全孤立空間で起きた不可解な事件のナゾを、文庫『読んで震えろ! 世界の未解決ミステリー』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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彼を殺したのはだれ?
基地内でメタノールは機材を洗浄するため使われており、誰でも入手は可能。実際、酒に混ぜて毒殺する事件が世界中で起きていた。
マークスの死をめぐり様々な憶測が飛び交うなか、捜査を担当することになったニュージーランドの警察が、自殺や他殺のほか、マークスが誤って、気分を高揚させるためメタノールを飲んだ可能性を指摘する。
実は、マークスは普段から大酒飲みで知られ、事件当時、深刻なアルコール依存症に陥っていた疑いがあった。また、彼は持病のトゥレット症候群(重度なチック症)を紛らわすため、飲酒することもあったという。
こうした状況から、マークスは基地内のメタノールを自ら摂取したものと推察された。
しかし、後にこの仮説は否定される。基地内には多くの酒類が保存されており、その気になればいくらでも手に入れることができた。わざわざメタノールを摂取する理由はどこにもなかったのである。
