彼はなぜ死んだのか? 極夜に閉ざされた南極基地で、32歳の天体物理学者は突然の体調不良に襲われ、原因不明のまま命を落とした。半年後の検死で判明した死因は、猛毒メタノールによる中毒死。自殺か、事故か、それとも他殺か――。世界中のコールドケースを取り上げた文庫『読んで震えろ! 世界の未解決ミステリー』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

写真はイメージ ©getty

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体調不良を訴えた物理学者が死亡

 2000年5月11日、南極点のアムンゼン・スコット基地でオーストラリアの天体物理学者ロドニー・マークス(当時32歳)が、研究棟から基地に向かい歩いていた途中、突然、吐き気と息苦しさに襲われた。寝れば症状も治まるだろうと早めに床についたものの、体調は良くなるどころか、ますます悪化。

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 翌12日午前5時、血を吐きながら目を覚ます。あまりの異常事態に、基地在住の医師に診てもらったが、原因は不明。診察時、マークスは胃や関節の痛みを訴えたほか、光を極度に眩しがり、サングラスをかけなければならないほど敏感になっていた。

 その後も体調は回復せず、3回目に医師のもとを訪れた際には過呼吸状態に。医師はストレスが原因ではないかと推測し、マークスを落ち着かせるために向精神薬を注射、様子をみることにした。ところが、注射を受けた直後から脈拍が徐々に弱くなり、やがて心停止に陥ってしまう。

 45分間の蘇生処置も虚しく、18時45分に死亡。医師は心臓発作か脳卒中で亡くなったのではないかと周囲に話したが、正確な死因を特定するには基地から一番近いニュージーランドまで遺体を輸送し司法解剖を行わなければならない。

 ただ、このとき、南極は冬の季節で悪天候と極夜が続き、飛行機が基地へ近づくことは不可能だった。そこで、マークスの遺体は6ヶ月間にわたり観測所の冷凍庫の中で保管された後、夏の季節となった同年10月30日にニュージーランドのクライストチャーチに運ばれた。

 検死の結果、驚くべき事実が判明する。