スクリーン上のゴジラを思いおこさせる巨体

 水機団員と海兵隊員を乗せたボートは音もなくブルービーチに着岸するや、直ちにボートを揚陸させビーチに展開した。その動きに無駄もなく、日米のチームワークも申し分ない。迷彩ドーランを塗りたくった両軍の将兵の顔に大粒の汗が滴り落ちるのは本訓練による緊張感に加え、25度を超える暑さのせいであろう。

 

 上陸部隊は敵主力を後退させたのちに陸上自衛隊のAAV7、日本名は水陸両用車を誘導、着上陸させる。ベタなぎの海面を2両さらに2両の計4両のAAV7がウオータージェット推進の水柱を巻き上げ、ゆっくりビーチに近づく。約25トンの巨体のほとんどを海面下に隠したまま時速は最高でも13キロで進んでくるが、ディーゼルエンジンのうなりを一段と高く上げ、ビーチに乗り上げるや大量の水しぶきを巻き上げその巨体を現す。その様はスクリーン上のゴジラを思いおこさせる。このAAV7の特徴は海上では13キロしか出ず、また攻撃も防御も脆弱だが一旦上陸するや時速70キロ以上で走る武装装甲車と化し、海兵隊員の足代わりとなってきた。

防弾板を取り払ったツルツルの見慣れない外装の水陸両用車

 2003年、イラク戦争末期、暴徒が暴れまわり、無法地帯と化したバグダッドに、騎兵隊のように突進してきたのも米海兵隊のAAV7部隊やったのを、不肖・宮嶋目の当たりにした。この水陸両用車を足代わり、時には弾避けや宿代わりとして、数百キロも内陸奥深くのバグダッドまで海兵隊は、はるばるやってきたのである。米海兵隊のAAV7は側面をさらに鉄製のギザギザの装甲板で覆われているが、今我々の目の前に姿を現した陸上自衛隊の水陸両用車は防弾力より浮力を優先したのか、防弾板を取り払ったツルツルの見慣れない外装であった。実際このAAV7、不肖・宮嶋も第1海兵遠征軍のホーム、カリフォルニア州のキャンプ・ペンデルトンで海上走行中に乗ったが、気色悪い揺れで、乗り心地最悪、沈まないのが不思議なくらいで、とても生きた心地がせんかった。

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 通常、上陸後は直ちに乗車している水機団員や海兵隊員が下車展開して、敵の反撃に備えるが、今回はまたまた間髪おかず、沖合の海上自衛隊の輸送艦を発艦したLCAC(エアークッション艇)がすさまじい轟音と水しぶきをあげ接近そのままブルービーチに乗り上げ上陸後、日米両軍の車両や人員を揚陸させた。