「10センチ伸びて173センチになりました」
上映後は横浜聡子監督、主演の原田琥之佑、和田大輔プロデューサーが登壇。
「原作の三好銀さんの漫画が大好きだったので、(映画化を提案され)難しそうだけどやってみたいと思いました。6年間、プロデューサーの和田さんと企画を温め、やっと実現しました」
と、横浜監督は感無量の様子。和田プロデューサーは、「『静か踊り』のシーンは街の人全体が協力して下さった。商業的な内容の映画ではないので、お金集めが一番大変でした」と、製作の苦労も振り返った。
15歳の原田琥之佑は、海外映画祭初参加にして堂々とした受け応え。
「日本の小豆島という島で撮っていますが、とても綺麗で空気も新鮮、空も青くて“奏介”にどっぷり入り込める環境でした」
スクリーンの中より原田の背が大きいことに気付いた観客から、身長について質問が出ると、
「僕は今15歳。映画を撮っていた当時は13歳で163センチだったんですけど、10センチ伸びて173センチになりました」
会場はどよめき、すぐに温かい歓声と拍手が広がった。
誰がやっても難しい役柄を自然体で演じた
本作には、奏介の美術の才を見出す美術商(諏訪敦彦)、アーティスト(村上淳)、知らぬうちに写真に写される女性(唐田えりか)など、芸術に様々な形で関わる人々が現れる。映画の世界に入り込むうち、肩肘張らずに生活に溶け込む芸術や創作の意味について考えさせられる作品だ。その流れで客席からは、日常からインスピレーションを受けることについての質問も飛んだ。
横浜監督は、「喫茶店で隣の人が話す会話からインスピレーションを受け、シナリオを書いたりします。ベルリンのホテルでも見ましたが、日常で人と人が会話する姿が一番刺激的です」。一方、原田は「一番ハマっているのはギターで毎日弾いています。ギタリストのギターを聴いたり、(ギタリストの)言葉を聞くことが一番刺激的。あとは映画鑑賞ですね」と答えた。
翌日の朝、滞在中のホテルで、ワールド・プレミアの感想を監督と原田に聞くことができた。まず監督は、
「不思議な世界観がどういう風に受け取られるのか緊張しながら見守っていましたが、想像しなかったところで笑いが起きて嬉しかったです」
と安堵の表情。原田は、
「緊張や不安があったのですが、温かい反応があってホッとして嬉しかったです。(自分の演技は)反省点だらけですよね。奏介の台詞みたいですけど『今ならもっともっとできるのにな』と思ったりして」
と、意欲的な顔ものぞかせた。


