原田は今回、約800人の中からオーディションで選ばれている。監督は彼のポテンシャルをいち早く見抜いていた。「受けの芝居が上手くて、芝居の相手を見られるタイプの若手俳優。アドリブが得意でぽんぽん出てくるんですよ。あと、絵が上手でプロ並みです。映画って登場人物の欲望がどう変化するかで出来上がると思うのですが、奏介の欲望はすごい曖昧。何を考えて生きているのか掴めないキャラクターで、誰がやっても難しいのですが、原田君はカメラの前でも自然体。このままでいてくれれば奏介になれるという予感があってお願いしました」

『海辺に行く道』

祖父・原田芳雄はすごい。僕は僕なりに頑張る

 これまでに『サバカン』(22年)や『ルート29』(24年)の映画出演の他、ドラマでも経験を積んできた原田。すでに大物感を感じさせる彼の祖父は、名優の原田芳雄だ。

「祖父から何かを受け継いでいるとか、そういうものは特にないですね。すごい人だけど家族だし、血縁上は近いですけど、僕が1歳半の時に亡くなっているので、記憶がないです。『祖父はこうやって生きてたんだな』と思ったりして。自分のやりたいように生きるって言いますか、『祖父は祖父ですごいから、僕も僕なりに頑張ろうかな』みたいな感じでやってます」

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ベルリン映画祭での原田琥之佑

 自分の言葉と感性をしっかり持った、これからが楽しみな逸材だ。

 映画として、初めて現代アートの祭典・瀬戸内国際芸術祭2025に参加が決定している『海辺へ行く道』。一般公開は晩夏の予定だ。初日から雪景色となり、近年でも記録的な寒さとなった今年のベルリン国際映画祭の観客の心を溶かした温かさとユーモアに、日本で触れられる日も遠くない。

『海辺へ行く道』

監督・脚本:横浜聡子/原作:三好銀/出演:原田琥之佑、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春/2025年/日本/141分/配給:東京テアトル、ヨアケ/©2025映画「海辺へ行く道」製作委員会/2025年晩夏公開予定

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