ゼロコロナ政策と中国不景気の産物か?
──そんな場所に、なぜ数十万人の中国人の多くが「自発的」にやってくるのでしょうか?
中国国内で負債を抱えた人が多いようです。ここからは私の見立てですが、中国ではコロナ禍の期間の非合理的なロックダウン政策や昨今の不動産バブル崩壊で、大量の個人事業主や小商店主が多額の負債を抱えました。
中国には自己破産制度がなく、返済不能な債務者の社会生活を制限する制度もある(顔写真や本名・身分証番号などが街で晒し者にされたりする)ため、「詰んだ人」は救われません。昨年9月に広東省深圳で発生した日本人学校児童の殺害事件をはじめ、中国各地で無差別殺人事件(献忠)が多発していますが、これらの事件の要因でもあります。
「詰んだ人」には、大金を稼いで人生を一発逆転しようと考える人も多くいます。そうした人たちが、大挙して国境をこえて東南アジアに向かっているのではないかと感じます。
無数に存在する「帝愛」
──ちょっと想像がつかない行動ですが……。
わからない人は、マンガや映画の『カイジ』シリーズを想像してください。悪徳企業「帝愛グループ」が、多重債務者を集めて働かせる地下施設が出てきますよね。あんな感じです。
もっとも、詐欺拠点で成功した人は月収数百万円を稼ぎます。こちらについては、同じ『カイジ』シリーズ(映画版の第2作)の裏カジノや、店長の一条聖也をイメージするとわかりやすい。カイジの地下労働施設と裏カジノがくっついたような場所が「ミャンマーの詐欺拠点」ということです。仕事ができなかったり反抗したりする人が暴力的な懲罰を受ける点も同様です。
なお、詐欺拠点はミャワディ近辺だけで30~50か所、さらにカンボジアやラオスにもたくさんありますので、現代の東南アジアは中国人が経営する「帝愛」だらけです。ビルの1室くらいの規模のものも含めると、すくなくとも100ヶ所以上はあるのでは。