「周囲からは、息子がまるで別世界に行ってしまったかのように見えるんです」
イーロンは10歳のときにプログラミングの勉強を開始し、13歳で彼が作成したソフトウェアBlastarが南アフリカの業界誌に掲載された。これは宇宙を舞台にしたSFゲームであった。
イーロンは子供時代から、周囲とはまるで変わっていた。好奇心が旺盛で、目についたものは片っ端から何でも拾いあげた。早熟で頭の良さははっきりしていたが、ときどきぼうっとして、心ここにあらずといった状態になった。そういうときには、話しかけても遠くをぼんやりとみるような目つきで、何も受け付けなくなってしまう。
彼の母は「周囲からは、息子がまるで別世界に行ってしまったかのように見えるんです。今でもそういうところがありますけど」と述べている。こういう状態のときは、「外界と遮断して1つのことに全神経を集中」させていて、心の目でイメージを細部まで明確にとらえることができたという。
少年時代のイーロンは、本の虫だった。たびたび近くの書店のフロアに座り込み、本を読みふけった。学校の図書館の本を読み尽くしてしまうと、イーロンはブリタニカ百科事典を読み始めた。そしてその内容をすっかり覚えてしまい、「歩く百科事典」と呼ばれるようになった。
しかしイーロンは、対人関係は得意とは言えなかった。少年時代のイーロンは人の誤りを正さずにはいられないところがあり、そのため相手の神経を逆なでしてしまい、周囲の子供たちから浮いてしまった。トラブルになる可能性があるとわかっていても、その場で発言せずにはいられない。このような特性は、ADHDの人にもASDの人にもみられるパターンである。
11歳のころ、父親からコモドール社のパソコンを買ってもらったイーロンは、一睡もせずに熱中し、わずか3日でプログラミング言語Basicを習得してしまった。また当時、爆弾やロケットを手作りしようとして、大けがをしそうになったこともある。祖父ゆずりの危険な行動も好み、バイクレースをして放り出されて有刺鉄線に激突したこともあった。
やはり友人関係は長続きせず、転校を繰り返した。深刻ないじめの被害も何度か経験した。このように頻繁にいじめに遭い転校を繰り返した点は、本書で紹介してきたケースと一致している。

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