高学歴で知的レベルが高く、有名校や一流企業に所属しているのに、大学で周囲から孤立、職場ではまったく評価されない。空気が読めず、ミスを連発してしまう。将来を約束されたエリートだったのに、彼ら彼女らはなぜ“転落”してしまったのか。共通しているのは「発達障害」を抱えているということだ。

 ここでは、精神科医の岩波明氏が、高学歴発達障害の人々の現状や、いかにして回復して社会復帰するかを提示した著書『高学歴発達障害 エリートたちの転落と再生』(文春新書)より一部を抜粋。国立大学の看護学科卒を卒業した20代女性の“特性”について紹介する。(全4回の3回目/4回目に続く)

写真はイメージです ©maruco/イメージマート

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「成績は上位」だけど人付き合いは苦手

 MMさん(女性、20代)は、国立大学の看護学科卒という高学歴の看護師である。彼女は大学卒業後に、地元の市民病院に就職したが、なかなかそこで適応できなかった。

 MMさんには言葉の遅れがあり、3歳ごろまではオウム返しにしか話ができなかった。このため家族が保健所に相談に行ったこともあった。

 子供のころから人付き合いは苦手で、友人は少なかった。音に過敏なところがみられた。小学校のときには、言動が変わっていると周囲からからかわれることが多かった。担任の教師と合わず、体型のことで怒鳴られたこともあった。ある時、廊下でクラスメートからいじられたため大声で反撃したところ、逆に自分だけ校長から怒られてしまった。

 中学になると、さらにはっきりしたいじめに遭った。周囲からは無視されることが多く、自分のしようとしたことを横取りされたこともあった。他のクラスメートが楽しそうにしているのを見ると、理由なく怒りがわいてきた。椅子で殴って殺したいとも感じた。自分なりにそういった感情を抑えていたが、からかってきたクラスメートをたまらずパイプ椅子で殴りつけようとしたこともあった。