それでも学校の成績は上位で、地元の進学校の高校に入学した。高校で友人はほとんどできなかったが、自分からトラブルを起こさないように注意をしていた。卒業後は地方の国立大学に進学した。

 看護学科を選んだのは、何か資格があったほうがよいという家族のすすめによるものだった。大学時代には周期的にふさぎこむようになり、大学の保健センターに相談にいきながら、苦労してなんとか卒業することができた。

職場で指摘された“問題点”

 地元の病院に就職してからも、調子が悪い時期が多くなかなか意欲がわかなかった。仕事に関して、自分で勉強をしたり、調べたりすることが億劫だった。そうした中で、患者の転倒や誤薬、点滴の管理ミスなどのインシデント(いわゆるヒヤリハット)を繰り返して起こしてしまう。

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 失敗が重なったため、MMさんは気持ちが落ち込み、自ら死んでしまいたいと思うようになった。加えて、職場で入院中の患者に対しても死んでしまえばいいのにと否定的な気持ちを抱くようになった。彼女は近所の精神科クリニックを受診し、うつ病と診断されて抗うつ薬を処方されたが効果はみられず、受診時に感情を爆発させて自分の心臓をナイフで突き刺したいと訴えることもあった。

 この時期、職場ではMMさんに対して以下のような点が指摘されていた。

 患者の受診相談を担当した時のこと、MMさんはマニュアルに沿って最初から最後まで一方的に話し、相当な時間をかけて説明していたが、その間患者がつらそうにしていることにまったく気が付かなかった。

 また、臨機応変の対応が苦手で、乳幼児健診の際、想定していない相談がきたときにまったく言葉を発することができず、表情がこわばって沈黙が続くことが何度かあった。

 さらに、相談者からの言い回しがマニュアル通りでないと、どう答えていいのかわからなくなってしまった。その上、彼女の口調の強さや断定的なもの言いについて、患者からクレームが多かった。

 加えて、曖昧な表現が苦手で、「仕事の様子をみながら、別の業務にもあたってください」などと同僚から言われても、MMさんにはほとんど通じずにどうしたらいいのかわからない。そのため、彼女はひとつの仕事を終えるまで次の仕事に移ることができなかった。