なぜ苦戦する? アイドルのセカンドキャリア事情
十束 はい。現場で礼儀を学べますし、事務所によっては上下関係がとてもきっちりしていますし、“元アイドル”というのは非常に貴重なスキルを持った人材だと思います。でもそれを上手く伝えられず、悩んでいる子が多いなという印象があります。
アイドル経験で培ったスキルを自覚できていなかったり、そもそも就職活動とはどういう流れで行われるものなのか、どこで情報を得られるものなのかもわからない。アイドルがセカンドキャリアを歩むにあたっては、いろいろなハードルがあると感じています。
――特に10代で芸能活動を始めた人だと、引退後に一般常識的なところで躓きそうですね。以前、元アイドルの方にお話を聞いたとき、「基本的なビジネスマナーを知らなかった」や「新幹線や飛行機のチケットの買い方がいまだにわからない」と話していました。アイドルを辞めた後で苦労しないために、現役時代にどんなことをしておけばいいと思いますか?
十束 まずはアイドルをやりきることが一番だと思いますが、「これ気になる!」や「楽しそう!」というアンテナを常に立てていてほしいですね。マネージャーさん、レコード会社やライブ会場のスタッフさんなど、身の回りの大人たちの仕事に目を向けてみるのも第一歩です。何気ない興味が次のキャリアのきっかけになるかもしれませんし、自分の好奇心を大切に育ててみてください。
――なるほど。もしアイドルを続ける理由が「好きだから」ではなく、「知らない世界に進むのが怖いから」になっているとしたら悲しい話ですよね。
十束 私はキャリアコンサルタントとして、「選択肢を増やすお手伝いがしたい」という言葉をよく使っています。ほかにもいろいろ選択肢があるなかで、自分の意志でアイドル活動をずっと続けているのだとしたら、それは素晴らしいことですからね。
アイドルたちは何に悩んでいるのか?
――アイドルやタレント向けのキャリアコンサルティングおよびメンタルケア支援を行っているそうですが、具体的にどんなことをしているのでしょうか?
十束 事務所からご依頼を受けて、アイドルやタレントだけでなく、最近はマネージャーやスタッフの面談を担当することもあります。
――差し支えなければ、面談ではどんな話をするのでしょうか?