「頑張りすぎて過呼吸や円形脱毛症になっているのに、それでもステージには立ち続けて、心と体が乖離していました」――インタビュー前編では、自身のアイドル時代についてそう振り返る十束おとはさん。
インタビュー後編では、会社員→アイドル(フィロソフィーのダンス)→キャリアコンサルタントになった経緯についてよりフォーカス。その異色のキャリアはいかにして築かれたのか?(全2回の2回目/最初から読む)
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会社員→アイドル→キャリコンになった「異色の経歴」
──アイドルからキャリアコンサルタントと聞くと、かなり思い切った転身のように感じますが、十束さんにはアイドルになる前に会社員として働いた経験があるそうですね。
十束 はい。大学卒業後に就職しています。かなりイケてる雰囲気の会社に入ってしまったので、周囲の「クラブ行こうよ!」みたいなノリにオタクの私は馴染めず……。会社に問題があったわけではなく、シンプルに自分との相性が悪かったです。忙しい店舗に配属されたのもあって、数カ月で心身が限界を迎えて退職しました。
しばらく引きこもりのような生活をしていましたが、「電撃文庫」と「SEGA」が共同で製作した格闘ゲーム『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX』の広報活動を行う「電撃FIGHTINGガールズ」のオーディションがあることを知って、試しに受けてみたら合格。芸能活動をスタートさせました。
――もともと芸能界には興味があったんですか?
十束 いえ、全然! 「電撃FIGHTINGガールズ」は電撃文庫のキャラのコスプレで活動するユニットだったので、「好きなキャラのコスプレをほかの人に譲りたくない」というオタク特有の愛と情熱で応募しました(笑)。「電撃FIGHTINGガールズ」という企画でなければ、そもそもオーディションというものを受けていなかったかもしれません。
――十束さんの人生における大きな転機だったんですね。芸能活動そのものには興味がなかったそうですが、その後フィロのスに加入したのは……?
十束 「電撃FIGHTINGガールズ」の活動のおかげで、ボロボロの状態から早めに社会復帰できました。「好きなことが自分を助けてくれる」と身をもって実感した出来事でしたね。とはいえ、「電撃FIGHTINGガールズ」はそれほど頻繁に稼働するユニットでもなく……。じゃあ次はどうしようと考えたとき、頭に浮かんだのがアイドルでした。私はアイドルが大好きで、でんぱ組.incといったアイドルの存在に救われてきました。だから芸能人になりたいというより、「大好きなアイドルに自分もなってみたい」という感じで、アイドルのオーディションを受けることにしました。ここでもまたオタク特有の愛と情熱なんです。
──ただ、フィロのスは、アイドルとしては音楽性などがけっこう独特のグループでしたよね?
十束 オーディションに合格して、私もかわいいアイドルになれると思ったら、本格的なR&Bとかファンクを歌うグループだとわかり、どうしよう……と(笑)。でも曲がすべて素敵だったし、メンバーみんな個性がバラバラすぎる結果、逆に衝突することもなく、おかげさまで楽しく活動していけました。
――もともとアイドル好きの十束さんですが、実際アイドルになってみて驚いたことはなんですか?