十束 表には出ない稼働の多さですね。「アイドルちゃんたちは、一瞬のステージのためにこれだけ努力を積み重ねているんだ」と思い知りました。

――2015年にフィロのスとしての活動をスタートし、2022年11月にグループを卒業しました。卒業を意識するようになったのは、いつ頃でしょうか?

十束 2019年に体調を崩したのがきっかけでした。

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「常に120%」アイドル時代はオーバーヒートしていた

――2019年に卒業について考え、実際にグループを去ったのは2022年なんですね。

十束 体調を崩してまもなく卒業を決め、2020年の時点で、私の意思はもうグループ全体に共有されていました。実際に卒業するまでの2年間は全力で活動しながら、“引き継ぎ期間”でもありました。

©三宅史郎/文藝春秋

――引き継ぎ期間?

十束 会社の引き継ぎと同じで、私がいなくなってもグループ全体に大きな穴が空かないようにすることを大切にしました。自分たちで新メンバーを選んで、一緒に練習したり話したりして、彼女たちがなるべく活動しやすい環境を整えていきました。

 そして何より応援してくれたファンの方への感謝が伝えられて、かつみんなの心の整理ができる期間が欲しいと思っていたので卒業発表も早めにさせていただきました。あとは「これからもフィロのスを応援してね」というお客さんへのメッセージを込めて、私の卒業公演のアンコールで新メンバーのお披露目をしたり……。推しである元でんぱ組.incの夢眠ねむさんの卒業公演がとても素敵だったので参考にしました。

――少し話は戻りますが、アイドル時代に体調を崩されたんですね。

十束 当時は力の抜き方が全くわからず、常に120%だったんですよ。肌身離さずスマホを持ってエゴサしまくったり、ファンのみんなにもっと喜んでもらいたくて練習に明け暮れたり、動画の編集について勉強したり、呼んでいただいたお仕事への期待に応えたくてゲームを必死に練習したり、生活の全てがアイドル活動に直結していました。

 自分がこんなに「誰かの期待に応えたい。もっと上を目指したい」と考える性格なんだとアイドルになって初めて知りました。でもそのせいでオーバーヒート気味だったんですよね……。私は自分が出役になると頑張りすぎちゃうから、出役をサポートする立場のほうが向いているんじゃないかと気づきました。

――その気づきがアイドル卒業後のセカンドキャリアに繋がっていったんですね。

十束 ずっと自分の“好き”を生かして活動してきたので、次も好きなことで何かできないかと考えました。お世話になっていた方にちょうどお声がけいただいて、フィロのス卒業後は、ゲームやeスポーツのイベントに携わる企業に就職しました。会社員として働く傍ら、キャリアコンサルタントの資格を取るための学校に通い、2023年に試験に合格。ありがたいことにキャリア面談などのご依頼が増えてきて、昨年6月に会社を退社し、現在はフリーのタレント兼キャリアコンサルタントとして活動しています。 

――なぜキャリアコンサルタントの資格を取ったんですか?