十束 キャリアの話だけでなく、多岐に渡ります。「日々の活動に響くんじゃないか」「グループの雰囲気が悪くなるのではないか」といった点が不安でメンバーやマネージャーには言いづらい悩みもあると思うので。「せめてこの時間はなんでも話していいよ」という感じで、アイドルの子たちとお話しさせていただいています。

 あとはアイドルと同じくらいマネージャーやスタッフも忙しくて余裕がなかったり、キャリアの悩みを抱えている方も多いです。面談を通して、キャリアの棚卸しをしたり気持ちを整理するお手伝いをしています。アイドルもマネージャーもお互いいっぱいいっぱいの状態だと、トラブルも起こりやすいので息抜きできる場所としてあれたら嬉しいですね。

「もっとゆるっと相談してほしい」

――「キャリアコンサルタントと面談する」と聞くと、なんだか大事に感じてしまう人が多いでしょうが、歯医者の定期検診くらいの気軽さで面談に行くのがいいのかもしれませんね。

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「もっとゆるっと相談してみてほしい」 ©三宅史郎/文藝春秋

十束 本当にその通りです。「キャリア面談=転職」とか「意識高い」のようなイメージを持っている方が多い印象ですが、もっとゆるっと相談してみてほしいですね。仕事の悩みを相談しにいらっしゃった方が、話しているうちに本当の悩みは家族関係など仕事と全く別のところにあると気づくケースもあります。仕事も含め包括的に相談できる場所が世の中にもっとたくさんあったらいいなと感じます。それで私もキャリアコンサルタントのほかに、メンタル心理カウンセラーの資格、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅲ種を取得しました。

――真面目ですね……!

十束 今は産業カウンセラーの資格を取るための学校にも通っています。私の思い込みかもしれませんが、どうしても“元アイドル”という経歴に対して、「この人に相談して大丈夫なの?」と不安になる方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。そういう方に安心していただくためにも、ひたむきに学び続けるしかないと思っています。

頑張りすぎて「円形脱毛症」になったことも…

――十束さんはそれだけ真面目だと、アイドル時代も頑張りすぎて大変だったのでは?

アイドルの世界も楽じゃない。インタビュー後編では、十束おとはさんのキャリアにより深く迫ります ©三宅史郎/文藝春秋

十束 とても楽しかったので来世もアイドルになりたいと思っています。でも、過呼吸や円形脱毛症になっているのにステージに立ち続けて、心と体が乖離していた時期もあったのかなと今になっては思います。

 当時は生活の全てをアイドル活動に繋げようとしていましたが、今はあえてぼーっとする時間を作るなど、意識して息抜きするようにしています。年齢を重ねて、「こうなりたい」とひたすら上を目指し続けるのではなく、自分自身の「こうありたい」を優先し、いろんなことをゆるやかに捉えられるようになりました。

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