セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)が、カナダの流通大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT)から7兆円規模の買収提案を受けている。この買収提案の問題点について、元国家安全保障局長の北村滋氏が考察する。

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食品市場の10%が外国企業に

 我が国の食料安全保障の観点からの議論も重要である。

 セブン&アイは2023年度において、グループのコンビニ・スーパーの食品売上高が4兆6000億円を超えており、国内の食品市場の約10%ものシェアを占めている。つまり、ACTによるセブン&アイの買収は、我が国の食品市場の約10%を外資企業が握ることと同義であり、広範なサプライチェーン全体(生産・製造・物流・販売)に計り知れない影響を及ぼすとともに、「食料安全保障上の重大な懸念」が生じる事態となる。

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セブンイレブン ⒸAFP=時事

「食料安全保障上の懸念」とは、具体的には、「食の安定供給」「食の安全・安心」「食文化」への影響だ。

「食の安定供給」への影響に関して――ACTによる買収によって外資の関連企業の参入や合理化・効率化が進められ、「海外調達への切り替え」が求められたらどうなるか。国内メーカー、生産者の衰退が助長され、食料自給率の低下、ひいては有事の際の食料調達リスクの拡大といった事態が懸念される。

 現時点ですでに、セブン&アイの将来について、取引先の大手食品メーカーなどから戸惑いの声が上がっている。

「食の安全・安心」への影響に関して――我が国と外国における食の安全・安心に対する考え方や文化の違いから、「安全で安心な日本の食」という信頼そのものが脅かされる懸念がある。

 実際、セブン&アイは、主力商品である「フレッシュフード」において、安全・安心で上質な国産原材料の積極的な活用を推進している。