「地域の食文化」を支える存在
特に小麦粉については国産小麦の使用量を拡大し、我が国の小麦粉の自給率の水準を大きく上回る比率で国産小麦を使用している。
野菜についても国産野菜の使用を推進しており、その取り組みの一環として、「GAP認証」を取得した農作物の取扱い拡大を進めている。
GAP認証とは、農林水産省が導入を推奨している農業生産工程管理手法の一つであり、これにより食の安全性向上や環境保全の高まりが期待されている。
セブン&アイは、2022年、福島県産の安全・安心な農産物を全国に広めることを目的とした「ふくしま。GAPチャレンジ」と連携し、GAP認証を受けた福島県産のレタスやトマトを使用し、サラダなど3品を福島県内454店舗において発売した。この地産地消や地域経済の活性化にもつながる取り組みが評価され、一般財団法人日本GAP協会からGAPの普及に最も貢献した事例として「GAP普及大賞」まで受賞している。
優良な地域原材料を使用したオリジナル商品や地域の嗜好を取り入れた商品の販売など、様々な連携を通じて「地産地消」や「地域の食文化のPR」を推進し、持続可能な食材の調達と地域の活性化に努めているセブン&アイのような企業は、日本において数字だけでは測れない大きな価値を持っている。
仮にACTがセブン&アイを買収したら、このような取り組みが失われる懸念がある。
そればかりか、効率化を追求する海外調達への切り替えにより、日本全国のセブン-イレブン店舗において、地域に関係なく画一的な商品ばかりが陳列される可能性すらあるだろう。
主要3ブランド(セブン&アイ、ファミリーマート、ローソン)がコンビニ市場の大半を占める我が国において、個人・家族経営の中小零細企業群が市場シェアの多数を占める米国などとは、M&Aの持つ意味や影響力が異なることを理解すべきだ。上述したような事態が生じた場合、我が国の「食料安全保障」への深刻な影響のみならず、「それぞれの地域に根づいた日本の食文化」が衰退する恐れも併せて考えなければなるまい。
※本記事の全文(約8500字)は「文藝春秋」2025年3月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(北村滋「日本の外資規制は甘すぎる」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・ACTのM&A戦略
・厳しいカナダの外資規制
・雇用創出と社会インフラ機能
・被災地支援としての機能

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