でも今は、励ましてほしい

桃子 祖母はあくまでも励ます側で、励まされる側だとは思ってない。そこが親分で、自分は上というか、抱きしめてやる側というか。

響子 でも今は、励ましてほしいんだよ。

桃子 現実に今は、励まされる側になっているよね。だけど、励まされることに慣れてないからどうしていいかわからない。心細くなると、とりあえず「手、手」って。

ADVERTISEMENT

響子 手を握りたがるんです。

桃子 「はい」って手を出して握ってます。

響子 あんなに気の弱い人だとは思わなかった。本質的には寂しがりなんだと思うんですよ。人に対して優しいのも自分がどこか寂しいからで、弱い部分があるのに性分で強く出てしまう。本質と性分が違うというか。

桃子 本当に強い人って、1人でぱーっと進むでしょ。でも祖母は誰かと一緒にいないと本当にダメ。喫茶店も1人で入れない。

響子 恥ずかしがりだったりもするから。

娘の響子と夫の田畑麦彦 ©文藝春秋

桃子 誰かと一緒にいるのが当たり前で、1人というのはあの人の意識にないんだよね。

桃子 私が母の立場だったら、家を出ていると思うんですよ。でも、母は本当に柔らかい人なんです。繊細だし、優しいし。私みたいに「はあ?」ってならない。

響子 母から、「あんた、私がいて、困ったなと思うことあるでしょ」って聞かれたことがあった。私は「洗濯物って洗濯機の中に放り込まれても、今日は水流が強いなあとか、洗剤が多めだなあとか思うだけで、それをいちいち困ったとは思わないでしょ」って答えたの。そうしたら「うまいね」って。

桃子 洗濯機がほめてる(笑)。

●対談全文は『週刊文春WOMAN2025春号』でお読みいただけます。

娘・杉山響子
すぎやまきょうこ/1960年生まれ。玉川大学文学部卒。両親の離婚後は、母の佐藤愛子と暮らす。

孫・杉山桃子
すぎやまももこ/1991年生まれ。立教大学文学部卒。現在は「青乎(あを)」として、映像や音楽作家として活動。

さとうあいこ/1923年大阪府生まれ。甲南高等女学校卒業。1969年『戦いすんで日が暮れて』で第61回直木賞受賞、2000年、65歳から執筆を始めた佐藤家3代を描く『血脈』の完成により第48回菊池寛賞受賞。2017年旭日小綬章を受章。

写真・文藝春秋

この記事の詳細は「週刊文春電子版」でお読みいただけます
101歳のシスターフッド|佐藤愛子 ぼけていく私。《好評第5弾!》

101歳のシスターフッド|佐藤愛子 ぼけていく私。《好評第5弾!》

次のページ 写真ページはこちら