「勇気をいただきました」と言われるのは、すごく嫌がっていた

桃子 母は年明けから、祖母についてのエッセイの連載(女性セブン「憤怒の人 母・佐藤愛子のカケラ」)を始めて。

響子 母との楽しい思い出から書きたかったのですが、まずは近況報告をという編集部の依頼もあり、施設に入るまでの道のりから書き始めました。

桃子 私もコミック&エッセイの連載(婦人公論「うちのばあさん101歳 佐藤愛子、無敵の老い方」)を始めました。

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響子 どちらも母には内緒です(笑)。

 ちょうど1年前、『週刊文春WOMAN』2024年春号の取材でお目にかかって以来、佐藤さんには3回、お話を伺った。そのうち1回は短い電話だったが、いずれもウイットに富み、笑ったり頷いたりしているうちにほっとする。そんな時間だった。だから、「佐藤さんは、人を助ける人ですね」と言ってみた。

2020年10月、少し早めの誕生日祝いでの、佐藤愛子さん、杉山桃子さん、杉山響子さん(左から・桃子さん提供)

響子 助けるというのは、どうですかね。頼まれると断れないというのは、あったと思いますが。

桃子 やくざ気質だよね(笑)。

響子 そうそう、親分気質(笑)。

桃子 書いたものへの感想で「元気をもらいました」とか「勇気をいただきました」とか言われるのは、すごく嫌がっていたよね。

響子 怒ってたね。

桃子 あげてねえし、知らねえよ、みたいな(笑)。

響子 「うるさいな、ほんとに。何だよ『もらう』って、大っ嫌いだよ、そういうの」ってなるんだと思う。

桃子 母さんて本当にばあさんの真似、うまいよね。だんだんそっくりになってる(笑)。

 佐藤さんの最新刊は1月に発売された『往復書簡集 はからずも人生論』(小学館文庫)。小島慶子さんとの共著だ。生きづらそうな小島さんが、手紙を重ねるうちに素直になっていく。夫や仕事のことを打ち明けては、佐藤さんに励まされる。その構図に、少し泣けた。

響子 そう、励ます人なんですよ、母は。

桃子 前も言ったことですが、祖母は情の人で心の人です。目の前に困っている人がいたら、励ましてやりたい。小島さんの事情もありつつ、それよりまずは「元気出しなよ」っていう。

響子 小島さんが正直な方というのもあったのではないでしょうか。母は正直な人が好きで、一番嫌いなのが「ざーます」です。表面だけ繕って本質を見せない。そういうのを嫌がるんです、「おしろいババア」って(笑)。