私の英語力はクラスのほぼ最下位だったので、こういうディスカッションの授業は本当にしんどかった。みんなの言っていることもわからないし、自分の言いたいことも言えないので、議論についていけない。授業では「チームに貢献しろ、自分が何を提供できるのか考えろ」とひたすら言われるんですが、最初は全く貢献できなかった。すると、チームのみんなが本当に冷たくなるんです。私は空気のように「いないもの」として扱われるようになっていきました。
どうやったらチームに貢献できるか、それを考えました。まずは、ケーススタディのテキストを徹夜で読み、1ページのペーパーにまとめてチームメンバーに配りました。難解な英文でも時間をかければ読み下せます。だけど、みんな頭がいいからペーパーを渡して1分ぐらいでパーッと読んで「ハイOK」みたいな感じで、あまり感謝もされなかった。「俺の数時間が一瞬で……」と愕然としましたね。ほかにもミーティングルームの予約を率先してやるとか、チームのディナーを企画するとか、自分にできることはすべてやりました。コミュニケーションを取るのは得意だったんです、関西人なので(笑)。
彼らにも弱点はあった
そのスタイルで1年ぐらい頑張っていると英語も出来るようになってくる。そうすると次第に、他の人の弱点が見えてくるようになりました。米軍出身の人はエクセルが使えなかったり、NPO出身者はビジネスの基本がわかっていなかったりする。それらに関しては私の方がわかっているので助けることができる。それぞれのバックグラウンドによって得意不得意があるんですよね。ちなみにゴールドマン・サックスなど金融出身の人は事務処理も速くビジネスもわかっていて、圧倒的な強者でした。
学校側は結局、学生がストレスにどれほど耐えられるかとか、発生するいろいろな問題についていかにチームで協力して対処できるかなどを教育プログラムとして組んでいて、そこを伸ばそうとしているんですね。
※本記事の全文(約4000字)は月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年4月号に掲載されています(辻庸介「大事なのはストレス耐性と心の自由」)。この記事は、特集「教育こそ最高の経済対策」のひとつとして掲載されました。
■教育こそ最高の経済対策
西川徹(プリファードネットワークス代表取締役 最高経営責任者)
「パッションを尊重する教育へ」
伊藤錬(Sakana AI共同創業者)
「サカナAIには『変わった人』がほしい」
小川久雄(熊本大学学長)
「TSMC工場建設は100年に1度の大チャンス」
重松象平(九州大学BeCATセンター長)
「建築学科を根本から作り変えたい」
清水博(日本生命保険相互会社代表取締役社長)
「元数学少年から社外活動のすすめ」
