グラントのこれまでの役者人生

 ロマ・コメの出演で有名になったグラントだが、これまでの役者人生を振り返ってもらった。

「20代で演技を始めたころ、唯一得意としていたのは、おかしな声をしたばかげた役を演じることでした。それを生かして二人の友達と劇場をまわってコメディ・ショーをしていました。とても順調でしたが、突然ジェームズ・アイボリーの『モーリス』(87年)に出演することになったのです。その後主演映画が次々に舞い込んでくるようになりました。

 自分とは全くかけ離れたキャラクターを演じるのは楽しいことですが、『フォー・ウェディング』(94年)や『ノッティングヒルの恋人』などは僕とは全く違います。でも僕自身に近いキャラクターを演じていると思われがちでした。これまで誇りに思える映画に多く出演しましたが、ハンサムで恋をしている男とか狭いジャンルの役しか演じていないなとも感じていました。

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 最近は今回のように心に屈折がある役を演じることを楽しんでいます。この後にホラー出演の予定はありませんが、本作が最後ではないと思っています」

日本で『モーリス』が大ヒット

『モーリス』はグラントの日本での人気を決定づけた作品だ。日本にまつわる当時の思い出はあるだろうか。

「あの映画の大ヒットには驚きました。80年代には日本に行く機会はありませんでしたが、多くの女性ファンから、ファンレターが届きました。当時はロンドンのアールズコートにある小さなフラットに住んでいたのですが、毎日のように郵便受けに何百ものファンレターが届いたものです。その多くには折り紙、千羽鶴が入っていたのをよく覚えています」 

ヒュー・グラント 1960年、ロンドン生まれ。オックスフォード大学在学中に俳優デビュー。『モーリス』(87年)でヴェネツィア国際映画祭の男優賞を獲得しブレイク。その後『フォー・ウェディング』(94年)を皮切りに、『ノッティングヒルの恋人』(99年)、『ブリジット・ジョーンズの日記』(01年)、『ラブ・アクチュアリー』(03年)などに出演し、“ロマンティック・コメディの帝王”と称される。近年では『パディントン2』(18年)や『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(23年)などで、印象的な悪役としても存在感を示している。

INTRODUCTION
A24が新たに仕掛ける脱出サイコ・スリラー。監督・脚本は『クワイエット・プレイス』の脚本で注目を集めたスコット・ベック&ブライアン・ウッズ。宣教に訪れたシスターを並外れた頭脳で翻弄する男に扮するのは、 “ロマンティック・コメディの帝王”として知られるヒュー・グラント。近年では『パディントン2』などの悪役として新たな地平を拓いているが、本作でその真骨頂を発揮。優しい笑顔の裏側に凶暴性を秘めた演技は、第82回ゴールデングローブ賞を始め名だたる賞にノミネートを果たした。

 

STORY
シスターのパクストンとバーンズはモルモン宣教師。森に囲まれた一軒家を訪れると、出てきたのはリードという気さくな男性だった。2人は神の教えについて説明をするが、あらゆる宗教に精通しているリードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開する。不穏な空気を感じた2人は帰ろうとするが、玄関の扉は閉ざされており携帯の電波は繋がらない。リードが指し示す2つの扉の一つを開けると、地下に降りていく階段があった……。2人は異端者の家から脱出することができるのか。

 

STAFF & CAST
監督・脚本:スコット・ベック、ブライアン・ウッズ/出演:ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イースト/2024年/アメリカ・カナダ/111分/配給:ハピネットファントム・スタジオ/© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.

 

「長い間、宗教を扱った映画をつくりたいとスコットと話していて、詳しく調べていたんです。人生の大きな疑問は常に我々を取り巻いているし、カルトには幼い頃から興味がありました。宗教と科学が交差するスタンリー・クレイマー監督の『風の遺産』や、宗教とSFを融合させたロバート・ゼメキス監督の『コンタクト』のような作品をつくれたらいいと考えていました」(ブライアン・ウッズ監督)