2024年10月の衆議院議員選挙徳島2区で当選した自民党公認の山口俊一氏の陣営が選管に提出した選挙運動費用収支報告書で、SNS運用委託費として業者に150万円を支払っていたことが明らかになり、徳島新聞が、業者側の取材の結果から公選法違反の疑いがあることを報じた。
業者側も、山口氏を応援するプラカードを支援者に持ってもらって、写真撮影してインスタグラムに投稿することを企画したり、インスタライブを提案して実行したりしたことを認めており、主体的・裁量的にSNSを運用した疑いがある。
一方、山口氏の事務所では、撮影や編集を一任していたことは認める一方、「動画撮影と加工」「撮影写真のピックアップ(選択)と補正」といった業務を記した指示書を毎日、業者側に渡しており、編集された動画をチェックし、映っている人の顔を消したり、音楽を差し替えたりするよう指示をし、配信も山口事務所側が行っていたことから、裁量権は山口氏側にあったとして、公選法違反を否定している。
「指示書」は言い訳か
毎日、候補者側から業者に対して「指示書」が出されていた事実があり、それが単に、選挙運動への対価支払についての「言い訳」にしようとしただけのものか、実質的に陣営側の主体性・裁量性で行われていたといえるのかが公選法違反の成否に関するポイントとなる。
この件については、本稿執筆の最終段階の3月3日に、私と上脇氏とで、SNS業務委託と報酬支払の当事者等を徳島地方検察庁に公選法違反で告発した。
私も上脇氏も、この件で徳島新聞からの取材を受け、公選法違反の成否についてコメントを行っているが、その取材の過程で知り得た情報から、山口陣営から業者への「指示書」は、具体性を欠き、業者側の主体性・裁量性を否定するものと言えない可能性が高いと考えられる。
自民党本部が“抜け穴”を指導した可能性
山口陣営において本件SNS運用委託を行った背景には、自民党本部から衆院選の各公認候補者に対してSNSを積極的に活用するよう指示があり、その際、公選法違反に問われることを防止するための対策として業者側に対して業務内容の指示を行うよう指導がなされていた事実もあるようだ。