これらからすると、SNS業務委託が公選法違反に該当する可能性は十分に認識されていたと考えられ、同衆院選における他の自民党候補者にも同種の問題がある可能性がある。これらの事情からすると、今後のSNSに関する公選法改正の議論にとっても重要だと考え、山口陣営によるSNS業務委託の問題について告発を行うことにした。
石丸氏のライブ配信も「キャンセル料」で問題に
また、2025年2月に入り、週刊文春で、昨年の東京都知事選挙で小池百合子氏に次ぐ2位となり、SNSの活用が注目された石丸伸二氏に関して、投票日の2日前の決起集会のYouTubeチャンネルでライブ配信された映像の撮影と配信を担当した業者に対して、石丸氏側が97万7350円を「ライブ配信機材キャンセル料」の名目で支払っていたことが買収罪に該当する疑いが指摘された。
石丸氏側は、ライブ配信はキャンセルしたが、業者側がボランティアで行ったと説明している。しかし、一応契約はキャンセルしたとしても、実際に、映像の撮影と配信が行われたのであれば、キャンセル料の支払が、その対価ではないかが問題になる。
「キャンセル料」の金額が、事前に合意されていて、ライブ配信を行っても行わなくても、契約上支払は免れないという場合でなければ、実質的にライブ配信の対価に該当し買収罪が成立する可能性がある(すでに、市民団体と上脇氏が、公選法違反で刑事告発を行っている)。
このように、選挙でのSNSの活用をめぐって、様々な事例が問題となり、それが刑事事件として捜査処分の対象となって、事例が積み重なっていくことで、SNS運用に関する公選法改正の議論が深まっていくことになる。
選挙運動は「ボランティア」が原則
公選法は、選挙運動の自由、表現の自由の保障との関係から、選挙に関する発言や表現の内容自体に対しては基本的に寛大である一方、選挙運動に関する金銭、利益のやり取りに対しては、「選挙運動ボランティアの原則」から厳しい態度で臨んでいる。