初期段階のSNSで意識したのは「投稿ごとにターゲット層をずらしていく」こと。

 たとえば乗り物の絵で好反応があったとしたら、乗り物好きの層のおよそのリーチ数が見えてきます。次に少しずらして、バイク好きな人を狙ったイラストを投稿する。すると乗り物好きの層とかぶるところとかぶらないところが見えてきて、またリーチ数がわかります。そうやってちょっとずつリーチする層を変えていくとそのうち大きなバズがやってきやすくなります。

――リーチするターゲット層を明確に意識するんですね。

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徹底的なこだわりと物量で特定の界隈を刺す

フジワラ 私の成功例でわかりやすいのが「新潟の地酒ルーレット」です。これは新潟県内約 90 蔵の日本酒を一本一本丁寧に描き起こし、ルーレット形式でGIFアニメにしたものです。前職で日本酒業界にいた経験を活かし、有名蔵から地元の人しか知らない小規模蔵まで、銘柄一本一本のラベルデザインを忠実に再現しました。細部への徹底的なこだわりと圧巻の物量という「熱量の高さ」が多くの日本酒ファンに刺さりました。

 実はこれ、日本酒界隈でよく知られた「にいがた酒の陣」という一大イベントがコロナで中止になったのを受け、友人と一緒に勝手に仕掛けた「にいがた酒一揆」というオンラインイベントの一環なんです。「コロナなんかで中止とは、なんてことだ!」という少数派による反乱の意味を込めて「酒一揆」(笑)。

「新潟の地酒ルーレット」 ©フジワラヨシト

 日本酒界隈のノリは熟知していたので、これに関しては、ある程度バズるだろうなとわかって仕掛けた投稿で、狙い通りでした。

 本に詳述しましたが、SNS上で話題になりやすい投稿には「共感性のあるイラスト」「特定の誰かに刺さるイラスト」「熱量の高いイラスト」「誰かを応援するイラスト」「誰かの役に立つポスト」という、王道ともいえる5つのパターンがあると分析しています。これらは再現性が高いので、いたずらにいいね数を追いかけるよりも、「いま自分は誰に向けてどんな価値を届けたいのか」を意識して実践していく積み重ねこそが、効果的なSNS運用につながると思います。

 こうした施策が功を奏して、わずか1年足らずでSNS経由でコンスタントに仕事の発注が得られるようになり、プロとして食べていけるようになりました。

SNSを「営業ツール」として使う上での注意点

――素晴らしい成果ですね。「仕事を呼び込む」うえでのSNSの注意点はなんでしょうか。

フジワラ まず、仕事の営業ツールとしてSNSを使うなら、個人アカウントでもそのSNSが仕事にふさわしい「店構え」になっているかをきちんとチェックすることが出発点です。プロフィールは自分の見た目の9割を決定します。自分が何者なのか、仕事の依頼方法と連絡先、実績が端的にわかる必要があります。これは基本の「き」。

 アイコン、ヘッダー、固定投稿も、この観点から効果的なアピールになるように調整します。

フジワラヨシトさん

 仕事で使うなら、自分という企業の公式アカウントだと思って運用することが大切です。公式アカウントなら絶対そんなことつぶやきませんよね、みたいな脇の甘いアカウントが多く見られます。愚痴や批判を避けるべきなのはもちろん、過熱している議論に安易なコメントを出すと、思わぬ炎上を呼び込んだりすることもあります。SNS上の極めて限られた情報で、あれこれ判断して投稿するのは非常にリスキーでしょう。

――とくに自分のリテラシーのない分野はそのリスクが高いですね。