作り出したいイメージを明確にもち、逆算する

フジワラ あともう一点、仕事に直結する形でフォロワー数を増やしたかったら、「私はこういう人間です」と思って自分が発信している像と、SNS上で「◯◯さんはこういう人だよね」と認識されているイメージ像を一致させること。

 そのギャップがあるアカウントだと、実はあまり信用されていなくてフォロワー数のわりにアクティブユーザーが少ないとか、投稿すればするほどその人の価値を下げているとか、なんとなくウォッチはされてもエンゲージメントは低くて仕事の依頼はこない、といった事態になりかねません。

アトリエにて

 マーケターとして著名な森岡毅さんは『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』(今西聖貴氏との共著)のなかで、「マーケティング・コンセプト」=木版画でいうなら「版木」と、消費者の頭のなかに集積されるコンセプト(ブランド・エクイティ)=いわば刷られて完成した版画、この両者の関係を理解する重要性を説いています。

ADVERTISEMENT

 どんな完成画にしたいのか不明瞭なままにただ懸命に版木を彫っても意味がありませんし、消費者に「カッコいい」と思われたいブランドが自分で自分のことを「カッコいい」と言ってしまったらむしろダサくなってしまうわけです。

 つまり、作り出したいイメージを明確にもち、そこから逆算して「版木」をつくる大切さはSNS戦術においても当てはまると思います。

 たとえば絵がめちゃくちゃ上手いのに文章がお寒いアカウントや、理想ばかりを語っているけれど行動が伴っていないアカウントなどは、自分で作品の価値を下げている典型例です。みんなのなかに作り出しいイメージと元の発信がチグハグなわけです。

 このあたりは、あまり言語化されていないSNSの機微ですが、発信する像と他者から見た像を一致させることから生まれる信頼性は、とくに仕事に結びつけていくうえで意外に大事なポイントだと思っています。

――目からウロコのご指摘です。

偶然の1万いいねより、狙った100いいねを!

フジワラ 「好き」を仕事にしたい人にとって、SNSはあくまで手段であることを忘れてはなりません。「バズる」こと自体が目的なのではなく、クライアントの目にとまり、「この人は信用できる」「ぜひ仕事を一緒にやってみたい」と思われて、発注につなげることが肝心です。

 だから運やタイミングの要素も強い偶然の1万いいねを狙うのではなく、狙った100いいねを目指すことをおすすめします。そのほうが特定のターゲットに深く届きますし、設計された投稿から生まれる意図的な成果には再現性があります。そこには、自分の作品に関心を持ってくれる可能性の高い「特定の誰か」からの反応が含まれているはず。

 狙った100いいねを積み重ねていくほうが反応してくださる方のエンゲージメントが高く、仕事につながる確率が高いというのは、私が実感を込めて言えることです。

「好き」を仕事にしていくうえで、SNSは非常に大きな武器となります。本書にはSNSを使ったブランディング戦略、仕事に結びつけるための暗黙知について余すところなく記しました。みなさんのお役に立てれば心から嬉しく思います。

コネ、スキル、貯金ナシから「好き」を仕事にするまでにやってきたこと
次のページ 写真ページはこちら