少年時代の大谷翔平がマネしていた意外な選手とは?

 大谷が小学5年生だった2005年、プロ野球の世界では、千葉ロッテマリーンズが日本シリーズを制した。そして6年生になる2006年の春には第1回のWBCが行なわれ、イチローがチームを引っ張って日本代表は世界一に輝いた。大谷が中学1年で全国の舞台に立った2007年には、松坂大輔がレッドソックスへ入団し、日本中を大騒動に巻き込んだ。

「イチローさんも松井(秀喜)さんもそうでしたけど、子どもの目には、国内のスーパースター、トップの人たちが大リーグへ行くという流れが映っていましたし、大リーグのほうが大きく見えましたね。

 でも、自分がそこを意識したのは、実際に大リーグの球団から欲しいと言ってもらえてからの話で、あの頃は、マリーンズの今江(年晶)さんのマネをしてました。打つほうでは今江さんのタイミングの取り方にハマってたんです(笑)。

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 ピッチャーのほうは、松坂さんのワインドアップでした。ホークスの斉藤和巳さんやファイターズのダルビッシュ有さんのマネもしましたね。パソコンが家に来てからは、それこそずっとYouTubeを見てましたし、いろんな人の投げ方を見ながら、ああでもない、こうでもないと考えてました。で、何かが閃いたら障子をあけて、窓に映る自分を見ながら、フォームをチェックするんです」

 トップレベルの日本人選手がメジャーへ行き、WBCで日本代表が世界一になり、インターネットを通じて世界中の野球を覗くこともできる――大谷はそんな環境で育ってきた。高校時代に160kmを投げ、いったんは高校からのメジャー行きを公言して世の中を驚かせ、プロでは“二刀流”に挑んでその名を全国へ轟かせた。

©文藝春秋

「僕は“羽生結弦世代”」

 プロ2年目にはベーブ・ルース以来、96年ぶりという“同一シーズンの2桁勝利と2桁ホームラン”を達成し、2015年は“投手三冠”に輝くなど、今や1994年生まれを代表する存在となっている。

「いやいや、だから僕は“羽生世代”ですって。これは真面目な話です。だって、国内だけですから……北海道だけですよ。明らかにそうじゃないですか。ねぇ、僕は羽生世代ですよね。

 羽生君は、確実に自分の世界を持ってます。受け答えを聞いていても、自分の価値観みたいなものを持ってるでしょ。僕にはそういうところがないんで……羽生君は自分のことを言えるけど、僕は恥ずかしくて、とてもそういうことは言えません」

 でも、いずれは大谷世代になるのでは――。

「それは、僕が決めることじゃないから(笑)。そんなの、羽生君が『自分は羽生世代だ』って言っているようなもんじゃないですか。そういうことを羽生君は絶対に言いませんし……だから僕は、『羽生世代だ』って言うんです」

 野球を始めてからずっと、大谷翔平は“今日、できることをした”という小さな自信を積み重ねて、ここまできた。その自信が岩手から東北、東北から日本への道を作り、今、彼を世界への扉の前に立たせている。

 いずれ大谷がメジャーの舞台でトップに上り詰める日が来ても、彼は「僕は羽生世代です」と繰り返すだろう。しかしそのときにはきっと、羽生結弦がこう言ってくれるに違いない。「僕は大谷世代です」と――。

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