池上彰さんの新連載「WEB 悪魔の辞典」では、政治や時事問題に関する用語を池上さん流の鋭い風刺を交えて解説します!

【共同宣言・きょうどうせんげん】 

 互いに都合のいい解釈ができるように練られた偉大な文学

【池上さんの解説】

 

 世界各国の首脳同士の会談の後に発表される共同宣言。対立していた国家の首脳同士が初めて会ってまとめられた文書。それぞれが本国に戻った後、野党やマスコミから「あれはどういう意味だ。相手に妥協したのではないか」と追及されることを予想して文章はつくられる。
 
 後から突っ込まれないように入念に準備された文章だけに、一読して意味不明というものも登場することがある。

 1965年に結ばれた日韓基本条約での合意文書は、日韓それぞれが都合よく解釈できるような文章になり、「玉虫色」と評された。

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 最近は「玉虫色」の意味がわからない若者が増えているので、念のために注釈すれば、玉虫という昆虫の翅は、見る方角によって色が変わる。見る場所によって違って見える。つまり双方にとって都合よく見える文章という意味になる。

カナダで開催されたG7サミット ©getty

 1対1で会っても玉虫色の表現になることがあるのだから、サミットのように複数の国の首脳が集まると、共同宣言は職人芸のように練り上げられる。日本語で読んで理解しても、英語で読んでみたらニュアンスが違う、なんてこともある。

 もっとも、2018年6月にカナダでまとまったサミットの合意文書は、会合を途中で退席したトランプ大統領が「認めない」と言い出し、せっかくの苦労は水の泡になった。

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