「入社後に休日出勤の必要があると説明を受けた。入社前はそのような説明は一切受けていなかった」(教育関連・女性)

「入社前に聞いていた出勤日数、休日日数と入社後に受けたそれらの説明の内容が違った」(製造業・女性)

なぜ、すぐ辞めてしまうのか…希望を見いだせない社会背景

今の若者は労働条件に敏感である。昔は採用説明会に際しては「人事の言うことは話半分で聞け」というのが常識だったが、今は少しでも会社が言ったことと食い違うとブラックかもと思い、すぐに退職してしまう。

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そもそも会社が「一生安泰」の場所だとはつゆほども思っていないし、自己防衛の意識が強く、「失敗したくない」という思いが人一倍強いとされる。それは当然だろう。

彼らが生まれた時には日本は不況真っただ中で経済の先行きも楽観が許されず、世界では戦争や紛争が勃発し、政治家は不祥事や不正を繰り返している。終身雇用制度は崩れ、給料から天引きされる税金や社会保障費は増えるばかり。その一方で少子高齢化による老後の社会保障も危ぶまれる。直近では、生成系AIの登場で仕事を奪われる人が多数発生するとも言われている。

このような希望が見いだせないなか、誰もが不安に感じている時代であれば、社会人1年目の新人が危機意識を持つのは不思議ではない。

都内の大学でキャリア教育を担当している講師は「誰もがすぐに転職したいと思っているわけではない。ただし、嫌なこと、自分には無理と思ったらファーストキャリアだし、辞めてもいいやという感覚はほぼ全員が持っているのではないか」と指摘する。

SNSなどによる情報量は豊富だが、コミュニケーションなど対人関係の距離感の取り方に不得手とされる。それだけに入社する職場での新たな人間関係の構築に大きな不安を抱えている。

今年4月に入社した2025年卒を対象にしたラーニングイノベーション総合研究所の「内定者意識調査(内定期間中の心境編)」(2025年1月27日)によると、「社会人になるにあたりどのような気持ちが強いか」を聞いたところ、69.3%が「不安・心配な気持ち」と回答し、最も多い。