「退職代行」は、その名のとおり本人に代わって退職の手続きを代行するサービスだ。最近ではメディアにも取り上げられることが増え、その名前を耳にしたことがある人も多いかもしれない。しかし同時に、会社とのトラブルを不安視されたり、「違法ではないか?」と批判されたりすることもある。
ここでは、退職代行を専門とする弁護士で、漫画『さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」』(少年画報社)の監修を担当した竹内瑞穂さんに、実際にあった退職代行でのトラブル事例や、SNSなどでよく見かける「退職代行の利用は甘え」という声への思いを聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)
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退職ではなく、休職を提案することも
――退職代行サービスは、ケースバイケースで対応してもらえるのでしょうか?
竹内瑞穂(以下、竹内) 依頼や相談の内容によって対応の仕方が変わりますね。例えば、退職の相談にいらした方に、すぐには勧めないこともあります。
――退職代行なのに、退職を勧めない?
竹内 あくまで私の場合は、ですけどね。例えば、休職できそうであれば、「退職ではなく、まずは休職をしてみないか」と提案することもあります。
会社はいつでも辞められる
――それはなぜでしょうか。
竹内 退職の意思表示をしたあと、それを撤回して会社での仕事を継続するのはなかなか難しいです。特に、弁護士から通知が届くと、会社はひきとめをせずに退職手続きに入ることが多い。見方を変えると、書面を出した時点で数日後、数週間後には無職になるということです。
だから、次の職場が決まっていない場合は、退職以外の選択肢も提示して意思確認を行います。それ以外にも、賞与や退職金はもらえそうかどうか、失業保険を申請できるかどうかも事前に確認することがあります。
どんな方に対してもひとつ言いたいのは、会社はいつでも辞められるんです。もし少しでも退職に迷いがあるなら、少し悩んでからでも十分間に合います。実際に私が担当した方でも、「いつでも辞められると知ってから、出勤できるようになった」という方もいます。