退職時のトラブルで多いのは…
――そうなると、退職時のトラブルとしてよく耳にする「退職の意思を伝えたら、会社から『訴えてやる』と脅された」という話も実際には起きないのですか?
竹内 退職する社員に損害賠償金の支払いが命じられたケースはこれまでにほとんどありませんし、今後もほぼ起こらないと思っています。ただ、会社が訴訟を起こして金銭を請求することと、それが裁判で認められることは別の問題ですから、会社が従業員に対して「金銭を支払え」と訴訟をすることは誰も止められません。
とはいえ、会社が「訴えてやる」と言っていたとしても、おそらく実際には訴えないことが多いと思います。退職を理由に訴えたところで、会社側にとって苦しい戦いになる可能性が高いですから。
ごく稀に、それでも従業員相手に訴訟を起こす会社はあります。あくまで「稀なケース」ですけど。それよりも、自宅に押しかけられるトラブルのほうが多いかもしれません。
――従業員の自宅に、会社の人が押しかけるということですか?
竹内 そうです。退職の意思を伝えたら、何度も電話してくるとか、それを無視していたら自宅に押しかけてくるとか。
従業員と経営者の繋がりが強い会社ほどこういったトラブルになりやすい傾向があると思いますし、依頼者にも事前にその可能性をお伝えしています。特に依頼者がひとり暮らしや社員寮に住んでいる場合、実家に帰るか、しばらくホテルに泊まるかして自宅に近づかないようアドバイスすることもありますね。
電話に出ない、自宅にもいないとなると、会社は依頼者とコミュニケーションの取りようがないので、最終的に弁護士を窓口にしてくださることがほとんどです。会社が従業員に直接連絡を取っている間も、弁護士から異議申し入れをするなどの退職手続きを進めています。
退職代行は「甘え」という声も
――会社と雇用契約を結んでいる社員は、簡単に解雇されないし、退職したいときはいつでもできることがわかりました。では、期限付きの派遣社員や契約社員、業務委託、役員といった人の場合はどうでしょう?
竹内 それこそケースバイケースですね。手続きが複雑になりやすく、民間の代行会社で断られたから、と弁護士に依頼してくる方も多いです。
でも、どんな働き方の人でも「仕事を辞められない」ことはありません。退職で悩んでいるのなら、まずは一度弁護士に相談してみてください。
――退職代行の認知度が上がるにつれて、従業員も会社も退職代行の利用をカジュアルに受け止める人が増えてきていると伺いました。一方で、いまだに「甘えている」という声も耳にします。