服好きも注目「某有名ブランド」はなぜ強い?

――劇中に、国内1位の最大手ブランド「アンノワ」が登場します。おそらく「アンノワ」は某ブランドをモデルにしているのだと思いますが、現実のファッション業界で、某ブランドをライバル視する企業は多いんでしょうか?

林田 某ブランドは客層が広く、サイズ展開も幅広い。何より、値段とクオリティのバランスが圧倒的です。おまけに近年は著名なデザイナーとコラボして、服好きからも注目される存在となりました。「某ブランドが飛び抜けてすごすぎるから、どのブランドも目指す前にくじけてしまう」というのが正直な現状だと思います。

『アパレルドッグ』作者の林田もずるさん ©平松市聖/文藝春秋

――ということは、「アンノワ」が圧倒的なシェアを誇るなか、ソラトが新ブランド立ち上げを任されるのは、やはりかなりの無茶ぶりなんですね……。

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林田 もし私が同じことを頼まれたら、絶対にイヤです(笑)。

第1話でソラトは上司の河原から「メンズブランド」の立ち上げを命じられる。業界の巨人・アンノワとどう戦うのか? ©林田もずる/講談社

――とはいえ、『アパレルドッグ』という物語において、「アンノワ」は今のところライバル的な立ち位置ですよね。作者である林田さんには、「打倒『アンノワ』」の秘策があるということでしょうか?

林田 現時点では、「打倒『アンノワ』」という描き方になっていますが、連載が続いていけば、時代の流れも変わっていくかもしれません。“勝つ”というよりは、“並走”して、アパレル業界全体を盛り上げていければと考えています。まだ詳しいことは言えないのですが……。

「こだわり」と「売上」の間で悩むアパレル業界の人々

――今後のストーリーが一層楽しみになりました! 『アパレルドッグ』には、ソラトをはじめ、こだわりと売上の間で悩む人々が登場しますが、これは業界内でよくある悩みなんでしょうか?

ソラトも「こだわり」と「売上」の間で葛藤している ©林田もずる/講談社

林田 そうだと思います。ファッションが好きだからこそ仕事にしたのに、大勢に商品を売るためには、どこかであきらめないといけませんから。私の場合、年齢を重ねるまではけっこう辛かったです。

――オシャレな服というより、無難な服を求める人が増えた印象はあります。

林田 不景気で服にお金をかけていられませんからね……。昔はいろんな柄や形の服が売られていましたが、今はどこのブランドも同じような服を売っていますよね。ブランド側も冒険するのが怖いんだと思います。