報道陣に吐露した「正直な思い」
実際、苦しかったのだろう。カザンに入る前の合宿地オーストリア・ゼーフェルトで、岡崎は報道陣に思いを吐露している。初対面の記者がいるような大勢で取材する場であっても、正直な思いを口にできる表裏のなさが岡崎の魅力でもある。
「こういう形で選ばれているので、選ばれたことだけで喜んでる場合じゃないと言うか。なにかを成し遂げた時にいてよかったと思えるのかなと」
「こういう形で」とは、負傷を抱えながらという意味。リスクを背負っているからこそ、何かをしないとここにいる意味がないということだ。
「現時点でのパフォーマンス、コンディションだけで選考されていたら、自分は選ばれてなかったのかなと思います。ただ、今までやってきたことは(選考基準として)もちろん選ぶ側にもあったと思うし、そこで選んでくれたので期待に応えたいという気持ちは強い。自分も今までやってきたことを続けることが大事だと思ってるので、それを口だけじゃなく、プレーで証明するしかない。何があろうとも、選ばれたんだったら、やっぱりそこに全力で応えたいなと」
こんな選手、過去の日本代表にはいない
自分の現状がふるわないことは強く認識しつつも、これまで積み上げてきたことには強い自信がにじむ。それは当然のことだ。この4年間、ブンデスリーガのマインツでは2年連続二桁得点をあげ(2013-14は15得点、2014-15は12得点)、憧れのプレミアリーグ移籍を自らたぐりよせ、弱小と思われたレスターで加入初年度に優勝まで果たしている。こんな選手、過去の日本代表にはいないのだ。欧州での圧倒的な経験と自信をプレーに昇華する術も身につけているはずだ。
8日のテストマッチ・スイス戦では出場なし、12日のパラグアイ戦では先発し74分までプレーした。前線からのプレスは機能したが、前を向きゴールに迫るシーンは少なく物足りなかった。それでも「最低限、これを出さなければいけないというものを全員が出せた」と手応えを口にした。ミックスゾーンで話しながら終始ご機嫌に見えたのは、久々に長時間プレーできたからでもあるだろう。
ここにきてピッチに立てない可能性も……
本番では、フォワードにどんなプレーを求めるかによって起用法は変わりそうだが、とりあえずスタートラインには立てそうだ。……と思われた矢先の15日、カザン入りして2日目の練習では全体練習に合流できず、軽い動きを行うのみ。右脚のふくらはぎを痛めたとのことで、別メニュー調整となってしまった。
ようやくたぐり寄せた3度目の大舞台。ピッチに立てない可能性も出てきた。しかし岡崎の圧倒的な経験は、たとえベンチにいても生かされるはずだ。そして「ビッグ3」という少し揶揄を含んだ表現を、本田、香川とともに言葉通り「ビッグ3」と呼ばせる働きを見せてほしい。