「沖縄のシメステーキ」という“都市伝説”が生まれた理由

 出所は知っている。日本各地の居酒屋をめぐる旅の本の沖縄編で、ステーキハウスを案内した人の会話が掲載されている。

 ただし、「沖縄では締めはステーキですよ」などとは書かれていない。「沖縄に来たからにはステーキも食べないと」という意味で誘っただけなのだ。その会話文がどう読み違えて広まったのか、いつのまにか、沖縄では締めはステーキという都市伝説が根づいてしまった。実のところ、僕はその本に登場したステーキを食べようと誘った人の友人なので、この件の真実についてはよ~く知っていたのだ。

 なので、担当者には、

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「それは作り話ですからコメントできません。そんな番組が放送されたら沖縄の人たちの酒癖の嘘がまかり通るので、番組制作も再検討してください」

 そうはっきり述べたが、結局はヤラセ満載の内容で放送されてしまった。

 それどころか、沖縄人は酒飲みから始まって、沖縄人は酒にだらしない、終電のない沖縄は朝まで飲んでいる人が多いから働かない、などという悪意に満ちたデマがまかり通るようになった。まあ、100パーセント嘘ではないが県民全員がそうであるはずがないし、だいいち酒に溺れている人間はどの都道府県にもいる。

「沖縄人は酒にだらしない」というのも見逃せない風説だ ©mapo/イメージマート

 国税庁統計情報 (2016年)の都道府県別アルコール消費量調査によると、トップ3は上から、東京都、鹿児島県、宮崎県で沖縄県は4位である。

 先の番組制作者は東京人がいちばん飲んでいることをお忘れなく。付け加えておくと、ハイセンスでオシャレな飲み方をしているはずの東京のサラリーマンの飲み方なんぞはいちばんだらしない。

 わたしゃ東京にも長く住んでいましたから、そのへんの事情は聖書に誓えるほど真実を述べている。本書をお読みの方も心当たりがあるだろう。