新垣結衣は「沖縄の物語」に出演することを決めたのか。5話連続、3月19日から第1話の放送が始まったWOWOWドラマ『フェンス』第2話までを視聴しながら、その意味について考えていた。

 長年の所属事務所レプロエンタテインメントとは今もマネージメント契約を一部継続してはいるが、結婚を機に個人としての活動をメディアに宣言して以降は、出演作の選択に彼女自身の意志がより強く反映されていると見るのが自然だろう。休む間もなかった以前よりはペースを落としながら、ひとつひとつ、派手ではないが新垣結衣らしい作品を選んで出演している印象だった。

©時事通信社

 その中で、野木亜紀子のオリジナル脚本作品である『フェンス』が選ばれたのは、ある意味では必然と言えるのかもしれない。『逃げるは恥だが役に立つ』『獣になれない私たち』の野木脚本による2作品に連続して出演したことは、新垣結衣の俳優としてのキャリアを大きく変えた。高視聴率を獲得し「国民的女優」としてさらにメディアに注目されただけではなく、そのブレイクに反比例するように出演作を減らし、個人としての活動にシフトする転機になったことは傍目にも明らかに思える。

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 沖縄基地問題を背景に、性的暴行事件の真相を追う──WOWOWドラマ『フェンス』の2話を見る限り、物語はその予告通り、あるいは予告以上にテーマに踏み込んでいる。沖縄出身の国民的スターである新垣結衣がそのドラマに出演することには、言うまでもなく大きなインパクトがある。

 だが制作側のインタビューは、その重さを知るからこそ「あの新垣結衣も出演」と過剰に煽ることを控え、彼女を矢面に立たせることに慎重になっているように見える。

©文藝春秋

満島ひかりを複雑な気持ちにさせたキャスティング

「例えば、ある役の人物が『基地反対』と言えば、役と自分の考えが違っていても、役柄とセットにして見られてしまうこともあり、キャスティングすることが暴力性をはらんでいると思います」

 ハフポスト日本版のインタビューに答える北野拓プロデューサーの言葉は、沖縄出身の俳優に作品のメッセージを背負わせることの危険さをよく理解するが故の発言だろう。

「沖縄を舞台にした映画の役のお話は来たことがある。でも、全部、米兵さんに悪いことをされる役で、4回くらい呼ばれて……」

 2019年、都内の映画イベントで満島ひかりがそう語ったことは多くのメディアに報道され今も記事が残る。