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 加速するSNSとドラマのその危険な関係を知るからこそ、作り手は放送前に「沖縄基地問題を一刀両断にはできないのだ」という警告を懸命に発しているように見える。

「0日にした方がよくない?」がバズってしまったワケ

「20年以上モメにモメて、県外じゃなくて辺野古になった」「どうして県外じゃなくなったんですか?」『フェンス』第2話では、松岡茉優演じる女性ライター、小松綺絵と編集長がそんな会話を交わすシーンがある。その会話は「最低でも県外」という、政権交代前の民主党党首の発言を否応なく思い出させる。

 沖縄基地問題の進展を掲げたにもかかわらず、政権交代した民主党は理想と現実の間で立ち往生した。沖縄の苦しみを軽減するために、では日本のどこになら中央政府が力ずくで負担を押し付けていいというのか? ニュースキャスターも新聞記者も明確な答えを持たなかった。迷走の上結論は辺野古移設に戻り、沖縄県民には深い失望が残った。

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 沖縄問題に関しては、リベラルの手も泥まみれに汚れている。そして野木脚本はもちろん、そうした記憶を呼び起こすことを承知で書かれているのだ。

 時代は変化した。中国だって資本主義化するし、米中関係は進展するだろう。アメリカだって冷戦の終わった東アジアからは経費削減で引き上げたいのさ、という2009年の楽観論は、もう2023年のどこにもない。

 世界はウクライナへのロシア侵攻や、東アジアの政変の予兆に怯えており、そこでは東アジアの米軍事力、つまりは沖縄米軍基地と自衛隊が鍵を握ることになる。支持率一桁に低迷する野党に再び「県外移設」を掲げて政権交代を狙える空気はまったくない。

 変化したのは政治だけではない。去年の秋のことだ。「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」インフルエンサーが無人の抗議拠点の立て看板の前で笑顔で記念写真を撮るツイートが拡散された。

 何年も続く抗議の疲れ、高齢の参加者たちの体力の衰え、そうした現実の穴を突くように投稿されたツイートは、3万リツイート、27万いいねという巨大なバズを引き起こした。その数字に引き寄せられるように、右派論客たちが次々と辺野古を訪れ無人の抗議拠点で嘲笑うように写真を撮り、それがまた拡散を生んだ。