「愛する者をあれほど暴力的に奪われる。その苦しみの現実は過酷です。眠れず、事件当日の一部始終がたびたびよみがえる」。事件後の深い苦しみから、自ら命を絶つ生存者も…。2018年、アメリカを震撼させたフロリダ州パークランドで起きた銃乱射事件が社会に残した深い傷跡とは? 事件の詳細を、実際に起きた事件や事故などを題材とした映画の元ネタを解説する新刊『映画になった恐怖の実話Ⅳ』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

フロリダ州の高校の銃乱射事件で17人を殺害したニコラス・クルーズ氏 ©getty

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生存者の生徒2人が後に自殺…銃乱射事件の余波

 2017年10月にネバダ州ラスベガスの音楽フェスで観客ら70人が銃殺、翌11月にはテキサス州サザーランド・スプリングスの教会で22人が射殺され、全米で銃規制の問題がクローズアップされていた時期に起きた本事件は銃規制に反対する全米ライフル協会に対する批判を強め、これまで協会員に対して割引制度や優遇サービスを提供してきた航空会社などが制度の廃止や縮小を決定。

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 また銃の販売も手掛ける世界一のスーパーマーケット「ウォルマート」が販売ポリシーを変更し、購入最低年齢を18歳から21歳に引き上げる方針を打ち出した。

世界一のスーパーマーケット「ウォルマート」 ©getty

 事件時、現場に駆けつけた保安官代理にも批判が集まった。彼は銃声を聞き何が起きているのかを把握していたにもかかわらず校舎に突入せず外で待機していた。それが被害を拡大させたとして保安官代理は辞職に追い込まれ、フロリダ州の検察当局は2019年6月までに彼を職務怠慢や偽証など11件の罪で訴追している。

 銃撃から生き残った者も大きな影響を受けた。事件に遭遇した生徒や教職員の大半が罪悪感やPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苛まれ、2019年3月17日に事件で友人を亡くした19歳の女子生徒が自殺。それから1週間も経たない同月23日には16歳の男子生徒が自ら命を絶った。