これは、驚きや精神的ストレス、痛みなどが原因で自律神経の「副交感神経」が反射し、心拍数の減少、血管の拡張を引き起こすことで、脳の血流が低下して意識を失う状態のことです。精神的ストレスが原因であれば、頭を低くして脳に血流を促しやすい体勢にすれば、そのうち意識は回復します。
先の事例も、これが原因であれば、動脈硬化症によって「脳梗塞」を発症する可能性は否定できませんが、「心臓麻痺」で死亡するほどのことではないはずです。
精神的ストレスが致命傷に
では、ほかにどんな原因があるか。
私が検討すべきと考えるのは「たこつぼ型心筋症」です。
通常、心臓は袋状になった心筋全体が収縮して、血液を効率よく送り出すのですが、たこつぼ型心筋症では根元の心筋だけが収縮し、先端部分は収縮しなくなります。そのため、血液をうまく送り出せなくなるのです。このときの心臓の形状が、タコ漁で使われる「たこつぼ」に似ていることから、このような病名がつけられました。
たこつぼ型心筋症は高齢女性に多く、身内の不幸や離婚、口論、災害などによる精神的ストレスが契機となって発症することで知られています。
発症すると、まるで心筋梗塞のような胸の不快感や胸痛、呼吸困難などの症状が出ますが、一過性であることがほとんど。しかし、高齢者の場合は、重症化して死亡する可能性があるのです。
実際、プロレス観戦で死亡したうちの一人は高齢女性でした。つまり、ショック死ではなく、たこつぼ型心筋症によって循環不全を生じた結果、亡くなったのではないか……とも推察されるわけです。
現在、各テレビ局は必要以上にショッキングな映像は流さないよう自重しているようです。津波など震災関連の映像は、流れる前に字幕で注意喚起するなどの工夫がされています。しかし、いつ何時、どんな映像からストレスを受けるかわかりませんから、身体に異変を感じたら速やかに医療機関を受診してください。
・テレビ視聴が体調不良の原因になり得ることを知っておく。
・高齢者に強いストレスを感じさせない環境作りを行なう。
・精神的ストレスを感じたら、早めにカウンセリングなどを受ける。
