怖いものなしの若い「武士」のよう
広瀬すずは令和の吉永小百合、杉咲花は令和の倍賞千恵子のようだと筆者は考えているが、清原は令和の日本映画界の誰だろう。残念ながら当てはまる女優が浮かんでこなかった。強いてなにかにたとえるなら、「武士」。『花束』で凛という名前をもらっていることからしても凛とした高潔な人物というイメージが強い。刀のようなクールなまなざしでこの世の中をジャッジする、そんなイメージの俳優である。
『片思い世界』の番宣で広瀬、杉咲と3人で出演した「ボクらの時代」での清原のポジションも実に興味深かった。杉咲が演技に対する持論を語ると広瀬は「豊かな思考を持っている」と褒めたのだが、なんとなくへんな空気になり、清原が「このやりとりどうだろう」「止めにはいろうか」とちょっととぼけた様子で口を挟んだ。こういう場合、気にせずスルーか、万が一気になっても気になってないフリをするかなと思うのだが、清原はそうではなかった。敏感だし、真面目だなと筆者は思った。いや、これはやっぱりいまはまだ年下だからこそゆるされるポジションなのかもしれない。
『片思い世界』でも3人の中で最年少ながら、最もしっかりしていて背も高く、美咲と優花の頼りないところを容赦なく突っ込む役割を担っている。サバサバしたところは、若さゆえの怖いものなしのようにも見える。そう、若いからこそ、巨悪に挑んでいける。
『片思い世界』のさくらはこの世から切り離されたとき、美咲と優花よりも幼く、愛情を強く意識する相手にまだ出会っていなかった。だからこそ、彼女にとって大切なのは美咲と優花で、彼女たちを会いたい人と引き離した相手に激しい怒りを覚え立ち向かっていくのではないか。
清原果耶は若さの特権を思いきり使っている。だから尊い。だからこそまぶしい。いま23歳。これから25歳、27歳、30歳と年齢を経ていったとき、どんな役を任されるのだろうか。明るい未来しか想像できない。
