物怖じしない人。石原さとみにはそんなイメージがある。情報番組『あしたが変わるトリセツショー』(NHK)のMCやドラマなどではわりと高く明るい声の印象があるが、トーク番組などで話していると、地声が意外と低いと感じることがあってドキリとなる。

石原さとみ ©文藝春秋

 石原さとみにインタビューをしたとき、ちょっと落とした声に貫禄があり、筆者のほうがだいぶ年上なのに、「あねさん!」と跪きたくなった。ぱっと輝く笑顔ができる人ではあるが、やたらと愛想笑いを振りまくこともない。むしろ口を閉じたほうが、ぽてっと肉厚の唇が印象に残って魅力的であることを自覚しているのかもしれない。

 主演映画『ミッシング』(吉田恵輔監督)と連ドラ『Destiny』(テレビ朝日)の宣伝で出演したであろう『徹子の部屋』(5月14日放送)での石原さとみの声はさほど低くはなく、徹子と話せる喜びに声ははずんでいた。

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 黒柳徹子はテレビの黎明期から活動している大御所であり、独特のリズムをもっている。彼女のペースに多くのゲストの人たちはたいていはまっていく。それを崩そうと果敢に勝負を賭けていくゲストたちもなかにはいるが、うまくいくケースは多いとはいえない。ぎくしゃくも含めておもしろいトークエンターテインメントになり、それが『アメトーーク!』で“徹子の部屋芸人”という題材になるくらいだ。ところが、石原さとみはひと味違った。

黒柳徹子 ©文藝春秋

石原さとみの「邪念のなさ」が黒柳徹子に響いた

 聡明そうな口ぶりで石原は徹子に質問をした。すると徹子はすんなり返した。話題は、徹子が人気絶頂のときに1年休んでニューヨークに行ったときのこと。石原もかつて、1ヶ月休んでニューヨークに行った経験があり、似た体験を語り合ったのだ。するするとそつなく徹子と同等に語り合う石原に漂う大物感。

 番組では、19歳の石原さとみが『徹子の部屋』(06年)にはじめて出たときの映像も流れた。そのときすでにこわいくらいまっすぐな視線で物怖じしない表情をして徹子と会話していた。30代のいまのほうがやや遠慮があるように思えるほど、19歳の彼女は堂々としていた。

 あくまで想像でしかないが、石原さとみは素直に質問をしただけで、『徹子の部屋』に爪痕を残してやろうと思ったわけではないのではないか。逆にその邪念のなさが徹子に響いたのではないか。そう、石原さとみの物怖じのなさは、雑念や邪念がなく、まっすぐさから来るものなのだと思う。

 物怖じしない、つねに自信に満ちあふれて見える石原さとみが、映画『ミッシング』では怖いものなしの心を危うくへし折られかかる人物を演じている。