元超アイドルの逮捕に、ワイドショーをはじめテレビ局は小躍りして喜んだはずだ。その過熱ぶりに一部の識者から、「興味本位で人権を軽視している」と批判が出たが、広末自身は、「メディアなんてこんなもの」とひとりごちているかもしれない。
広末という人間は、男を見る目はあまりないと思うが、自分の生き方については他の凡百の女優より考え、真剣に悩んできたように思う。
「私にもそろそろ起こるのだろうか」
彼女が3年前に出したエッセイ集がある。『ヒロスエの思考地図』(宝島社)。そこで彼女は「学生時代から哲学書が好きだった」と書いている。
一章一章は短いものだが、哲学者の言葉を引いて、自分の考えを思いつくままに書いたものだ。
例えば、セーレン・キルケゴールの「人は、他人にとっても自分にとっても、等しく謎であるらしい。私は私自身を研究する」という言葉を引用してこう書いている。
「『ミッドライフ・クライシス』という言葉を聞いたことがあるだろうか? この考えを提示したのは、精神科医であり心理学の礎を築いた学者でもあるカール・グスタフ・ユングだ。
『人生の前半にはなかった悩みや問題が現れ、アイデンティティーが揺らぐ』現象を指している。きっとこれは、必ず誰しもに起こる“中年の危機”ということではなく、個人差があるだろうと私は思う(ユングは、32歳から38歳の間に深刻な変容が必ず起こる、と言ったけれど)。
今まで価値があったものに価値を見出せなくなったり、今までの仕事や生き方に関心を失い始めたりする。そんなことが、私にもそろそろ起こるのだろうか?」
芸能界を引退しなければ、彼女自身が危ない
「『生の転換期』とも言われるこの現象が、平均寿命が延びている現代社会では40歳前後にあたるのだとすると、キルケゴールの言う“謎”は私の中で、ますます、これから深まるのだろうなと思う。
『人生の正午』とユングが例えた中年期。体力の低下、記憶力の衰え、肌の乾燥や老化も否めない。(中略)