「徐々に性器を触られたり、舐める行為も…」性加害はさらにエスカレート

――キスをされたことへの疑問は感じませんでしたか?

後藤 なかったですね。僕は、性について理解するのがすごく遅いほうだったんです。当時はインターネットが出始めたくらいで、今みたいに情報を得る手段がなかった。

 それに我が家は厳しい家庭だったので、雑誌やビデオなど、性の情報源が家の中に何もなかったんです。

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――情報がないとわからないですよね。

後藤 だからキスに対しても、お母さんが赤ちゃんの頬にするイメージを持っていて、それが性的な意味を持つとは想像もできなかった。

 家庭教師からキスをされたときも「スキンシップの多い仲のいいお兄さんが、愛情表現をしてくれてる」という感じでしたね。それが悪い行為かどうかも判断できなかった。

――その後、さらに行為がエスカレートしていったそうですね。

後藤 徐々に性器を触られたり、逆に相手の性器を触らせられたりしてました。たしか、舐めるとかもしてたと思います。家庭教師が週3~4回家に来るなかで、勉強はそっちのけで、ほぼ毎回そういった性加害がありました。

 そしてあるとき、「お尻に入れるのと入れられるの、どっちがいい?」と質問をされたんです。

膝の上に乗せられて勉強を教えられる後藤さん。家庭教師からの性加害はどんどんエスカレートしていったという(写真=後藤慶士さん提供)

家庭教師の行為に不信感を抱かなかった理由

――質問の意味を理解できなかったのでは。

後藤 最初は言ってることの意味がわからなかったけど、痛そうだから入れるほうがいいなと思いました。ただ、初めのうちは入れる側でしたけど、回数を重ねていくうちに、結局両方やることになって。

 その行為を初めてしたときも、「気持ち悪い」とか「嫌だ」という感情はなかったんです。ただの子どもの遊びの延長、みたいな感じで「なんだこれ。繋がってる、電車ごっこみたい、おもしろい!」と思っていました。 

――その行為で家庭教師に不信感を抱くこともなかったのですか。

後藤 僕にとっては信用している仲のいいお兄ちゃんなので「この人が言ってるんだったら大丈夫か」と思っていたんです。

 しかも、それまでに触る・触られるという行為もずっとやっていたので、入れる・入れられるという行為に対しての疑問も湧かなかった。その時点でも、性加害という認識すらなかったです。

 今思えば、グルーミング(性的手なづけ)されていたんですよね。なにも知らない子どもに教えこんで、それを普通だと思わせてしまう。