性加害をうけた影響で「人と比べて愛情表現が少し変わっている」と感じる理由
後藤 僕はポリアモリー(複数愛者)という性質と、SMの特殊性癖をもっていて、人と比べて愛情表現が少し変わっている気がしています。
好きという感情が溢れすぎて、それをどう伝えていいかわからなかったり、1人の相手じゃ満足できなかったりする。また、愛情の伝え方がひねくれている傾向もあって。それは、性加害をうけた影響もあると思うんです。
家庭教師からの行為をひとつの愛情表現として受け取ってしまっていたけど、実際は愛情ではなかったこと。さらに、中学受験に失敗してから、突然親が勉強についてなにも言わなくなったこと。それらが同じタイミングで重なったことで、「愛情とは何?」と混乱してしまって。“愛情迷子”になった気がしています。
――複雑な思春期だからこそより混乱してしまいそうです。そこからどうやって気持ちを整理していったのでしょう。
後藤 やっぱり時間の経過が大きいですね。30代半ばくらいから、自分の中で心の整理ができるようになりました。それまでは約30年近く誰にも言えず、1人で抱え込んでしまっていたので。
性加害を受けた過去を両親に公表した経緯
――性加害を受けたことをご両親に伝えたのも、最近なのですよね。
後藤 本当にここ1年くらいの話で、僕が37~38歳になってやっと伝えられました。
――打ち明けようと思ったきっかけがあったんですか?
後藤 今の仕事を始めたことがきっかけですね。会社を立ち上げて、「Luna」というSMマッチングサイトを始めたんですけど、サイトの利用者のなかには特殊な性経験がある方や、性被害を受けた方もたくさんいて。
自分も性被害にあった経験があるからこそ、そういう方たちの居場所をつくりたいと思って「Luna」を立ち上げたんです。
それを親に説明するうえで、性被害にあったことを伝える必要があるなと思って。
――ご両親はどのような反応をされていたのでしょう。
後藤 正直に打ち明けたら、親は「そんなことあったんだね」とショックを受けていましたね。あとは、「ごめんね」とすごく謝られました。
――ご両親に話したことで、ご自身の心境になにか変化はありましたか?
後藤 スッキリはしました。自分の中でモヤモヤしてた部分がずっとあったので。親からすると、家庭教師はすごく仲の良いお兄さんという認識でいたので……実はそうじゃなかったという話ができて、やっと心が落ち着きました。
ただ僕が楽になった分、親に重荷を背負わせてしまった。なので、親に伝えたことが結果的に良かったかどうかは、ちょっとわからないです。知らぬが仏ということもあるし、僕の自己満足になってしまった可能性もあるのかなって。
