「何も知らない人を信用させたり…」洗脳に近いグルーミングの怖さ
――日本の性教育については、問題視する声が大きくなっていますよね。
後藤 たとえば、女性の生理は月に1日しか来ないと思ってる男性もいるんです。被災地で生理用品が早急に必要な女性が、「大して血なんて出ないんだから1日ぐらい我慢できるでしょ」と言われたという話を聞いたこともあります。それも正しい性教育を受けていないから起こることですよね。
――最近は、グルーミング(性的手なづけ)も大きな問題として取り上げられるようになりました。
後藤 何も知らない人に対して間違ったことを教え込んだり、信用させたりして、自分の好き勝手にしようとする行為は、言葉にすれば洗脳に近いものだと思っています。それがグルーミングの怖さですよね。知識や経験の少ない子どもは、特に被害にも遭いやすい。ただ、子どもだけでなく、老若男女、誰もが被害に遭う可能性があると思っています。
性被害の話だけではなく、権力のある人が、相手を信用させて騙すという構造は、社会の中でたくさんあるじゃないですか。悪徳な宗教とか詐欺も、やってることは同じだと思っています。せっかく信用してくれた人を騙すような行為はしないでほしい。
「性にまつわる困りごと」を抱えている人に居場所を作りたい
――先ほど会社を立ち上げたとおっしゃっていましたが、今後はどのような取り組みを?
後藤 僕が運営しているサイト「Luna」にも、性被害の当事者が多くいます。特殊な性癖を持ってる人たちって、子どもの頃に性被害にあったり、トラウマになる経験を持ってることが多かったりするんです。
そういった過去の影響で、性にまつわる困りごとを抱えている人がたくさんいる。だから僕は「Luna」を通して、そういう人たちの居場所づくりをしていきたいと思っています。
――当事者として、同じような性被害者の方に伝えたいメッセージはありますか。
後藤 性被害に遭った人たちに対しては、「1人じゃないんだよ」と伝え続けていきたいですね。やっぱり1人で抱え込んで苦しんでる人がすごく多いと思っています。僕も30年近く誰にも言えなかったから。
カウンセラーでも良いですし、信頼できる友達でもいいので、話ができる人が1人いるだけで違うと思うんです。
撮影=細田忠/文藝春秋

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