「てめえなんて生まれてこなけりゃよかったんだ!」

 中学生になっていた未知は暴力から逃れるため、地元の不良グループと付き合って家に寄り付かなかった。仲間の家を泊まり歩き、たまに家に帰って義母に叱(しか)りつけられれば、反発してまた家を飛び出す。

 ある日、未知が義母と決別する出来事が起こる。夜、未知が不良仲間とともに盗難バイクを乗り回して遊んでいたところ、通報を受けた警察に取り囲まれて捕まった。未知たちは警察署で取り調べを受けた後、一人ひとり保護者に引き渡されていった。

 未知を引き取りにやって来たのは、義母の長男だった。家に敏夫と義母が不在だったため、長男が代わりに来たのだ。この時、20代後半だった長男は、住吉会の準構成員として敏夫の経営する暴力団のフロント企業で働いていた。

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 家に帰ると、長男はいきなり未知の顔を殴りつけて激怒した。もっとも近づきたくない警察署へ呼び出されたことが気に入らなかったのだ。彼は室内にあった木刀を手に取り、滅多打ちにした。

「てめえ、好きなことして俺に迷惑かけんじゃねえよ。ソープ嬢が産んだ子供のくせに、何様のつもりだ!」

 あまりに激しく殴られるため、未知は言い訳さえできなかった。さらに長男は木刀で殴りつけた。

「お袋はてめえが家に来てからおかしくなったんだよ。俺たち血のつながった兄弟まで迷惑してんだ。てめえなんて生まれてこなけりゃよかったんだ!」