サメの連続襲撃は“単独”か“複数”によるものなのか?
――当時の日間賀島での連続襲撃は、“単独犯”によるものか、それとも“複数犯”によるものなのか、どうお考えでしょうか。
「うーん、それはわからない。何ともいえない。ただ、こうやって人を襲って死に至らしめるほど大きいサメが当時、そのへんにゴロゴロいたかというと、そうは思えない。でも、やっぱり何ともいえないですね。
それだけ大型で人を襲うサメとなると種類はある程度、絞られるとは思います。ホホジロザメか、イタチザメ、あるいはオオメジロザメか。ただオオメジロザメはどちらかといえば、熱帯から亜熱帯にかけての温かい海で活動するので、ここまで入ってくるのかな、という気はしないでもない。そういう意味では、比較的水温が低い海域でも活動できるホホジロザメの可能性が高そうだとは思います」
――実際に1995年に渥美半島沖で起きた死亡事故はホホジロザメによるものでした。現場海域と日間賀島は近いので、日間賀島に出てもおかしくはないですよね。
では、例えば人を襲うことを覚えてしまったサメが日間賀島周辺に長期間居ついて、襲撃を続けたということはありうるのでしょうか?
「何とも言えないですね。それを検証するには、この当時の水温の記録とか漁獲の記録とか、あるいは海中での作業中に襲われたのか、漁獲物を引き揚げるときに襲われたのかとか状況記録ですね、そういうことがわからないと判断しようがないんです」
大型で人を襲うサメが沿岸に近づいてくる“可能性”はある
――例えば水温の変化で、大型で人を襲うサメが沿岸に近づいてくることはあるんでしょうか?
「それはありえますね。ぱっと思いつくところでは『冷水塊』というのがあります」
日本列島の南岸を流れる黒潮(暖流)が何らかの原因で南に大きく蛇行すると、蛇行した黒潮と日本列島南岸との間に、大きな冷たい水の塊が発生する。これを冷水塊といい、冷水を好むイワシなどが冷水塊に集まってくる。
「そのイワシを追って、マグロとかカツオもやってくるし、さらにそれらを狙って大きなサメもやってくることはありえます」
一方で各地の漁業を見てきた小沢はこんな指摘をした。
「日本では40ほどの都道府県で、素潜り漁(岩手県や三重県など)やスキューバなどを使った潜水器漁(千葉県や静岡県、愛媛県など)が行われています。そうした中でも日間賀島地区における潜水漁業従事者は100名を超えたときもあり、この限られた狭い地域にこれだけの従事者がいたというのは、珍しいと思います。また知多・渥美半島も含めて、比較的外洋に近い場所で潜っているのも特徴です」
つまり、他の地域の潜水漁と比べて単純にサメとの接触の機会が多かった可能性はある。

