市民生活への影響が…
慣れない大雪に、一般道では各地でスリップ事故も多発した。読売新聞中部支社版の27日朝刊では、四日市市内の踏切内における脱輪事故や、同じく踏切内での大型車による立ち往生が報告されており、連日の雪を原因とする事故が東海三県で1000件を超えたことも伝えられている。
物流の動脈がマヒ状態に陥ったことで、西日本~中日本の流通はみるみる滞っていく。市場の入荷量は激減し、朝日新聞名古屋本社版27日夕刊によれば、名古屋中央卸売市場における同日の野菜の入荷量は普段の半分に。魚市場のせりも機能不全に陥った。
小売店への搬入も大幅に遅れ、28日の毎日新聞京都版によれば、市内のコンビニへの配送が大幅に遅れた結果、届いた食品が間もなく賞味期限を迎えたため廃棄せざるをえないケースが相次いだという。
ホンダやトヨタ、マツダや三菱といった大手の自動車メーカーも、工場への部品供給が滞り、操業停止を余儀なくされた。
混乱のなか、運送業者のなかには陸路を諦め、フェリー利用に転じるドライバーが激増する。27日、愛知県の渥美半島先端にある伊良湖岬のフェリー乗り場には普段の10倍ものトラックが押し寄せ、乗り場へと続く2本の国道でそれぞれ約2kmにわたる渋滞が生じた。
時代を感じさせるのが、郵便局をめぐる混乱だ。年賀状の配達に遅れが生じる懸念が高まり、普段は配送業務に携わらない背広組が応援に駆けつけ、夜通し仕分け作業に取り組む姿を読売新聞中部支社版が29日の朝刊で報告している。
なお同じく29日の朝日新聞名古屋本社版朝刊では、年賀状の業務が通常に戻り、25日までに投函された年賀状はつつがなく元日に到着する予定と伝えられている。
このように、今でこそ「154kmの大渋滞」という記録として語られる出来事だが、これだけの大混乱の背後には想像を絶する極限状況が各地で繰り広げられていた。ここで取り上げた事柄も、当時個々人の身に起きた労苦のごく断片に過ぎないことを思うと、なんとも途方もない気持ちになる。
なおこの渋滞の翌年には道路交通情報通信システム(VICS)がサービスの提供を開始し、2001年にはETCサービスが始まる。新名神・新東名の開設や、チェーン規制の明確化など、インフラ面や制度面の充実を考えると、現在この規模の渋滞が発生するとは考えにくい。
これからどんな渋滞に遭遇しようと、「154kmに比べればマシ」と思えば、少しは気分が軽くなるかもしれない。もちろん人間、それほど都合よくできてはいないわけなのだが。