「待機補助」で交通費だけしかもらえないときも…

――ビール売り子といいながら、最初は別の飲み物しか売れないんですよね。

ぽぽちゃん そうなんです。私の時代はまず「ポールスター」というスパークリングワインを売るところからのスタートでした。女性は結構飲んでくれるんですけど、あまり売れないんですよ。売れないから樽交換するタイミングも少なくて、水分補給する時間も取れなくて……。

 サワーやハイボールもそうですけど、ポールスターも氷がついている分、余計に重いんですよ。どんなに歩き回っても売れないし、どんどん疲れていくし。それに、ポールスターも背負えない時期があるんですよ。

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――売り子なのに背負えない? どういうことですか。

ぽぽちゃん 「待機補助」というのがあって、出勤すると「今日は補助ね」と言われて、着替えもせずに、3~4人が会社の事務所で座って待ってるんですよ。出勤した子たちが全員配置についたら電話がかかってきて、そうしたら補助の子たちは基本給という名の交通費だけをもらって帰るんです。逆に欠員が出ると「今から着替えて」って言われて、売り子をやるんです。

ポールスター、サワーを売ってからビール売りに格上げ

――スポーツの補欠みたいな感じですね。

ぽぽちゃん そうです、そうです。最初は「待機補助」が多いんですけど、当時、私は高校生で、お小遣いが欲しいくらいの感覚で働いていたんで、売り子として働かなくてもお金はもらえるし早く帰れるので「きょうは学校の課題をやろう」とか切り替えてたんです。

 でも、大学生の子たちは家賃を払うためであったり、ある程度稼ごうと思ってバイトに応募するじゃないですか。それなのに連続で「待機補助」になることもあるから、辞めていく子も多いんです。

 私の会社の場合、最初はポールスター、その次はサワーと変わっていきます。仕事をしていくうちに、どんどんお客さんのさばき方がわかってくるんですよ。それでサワーの売り上げがよかったり、欠員が出たらビールに上げてもらえるんです。

 

――歩合の額も違うんですよね。ビールを1杯売ると30円くらいで、サワーはそれよりも少ないとか。

ぽぽちゃん だいたいそれぐらいです。あと「達成賞」があるんですよ。その日に売り上げたビールの樽が何個以上ならプラスいくらって感じで、10樽でプラス5000円とかつきました。

 ほかにも3連戦に全部出るとプラス1000円もらえたり、月全部出勤したらボーナスが出たり。なので頑張れば頑張るほど、お給料が上がるイメージでした。

 あと私がやっていた頃はまだ現金支払いだったので、800円のビールを売って、1000円札を出したお客さんが「お釣りはあげるよ」とチップをくれることもありました。でも今は東京ドームも現金じゃなくなりましたね。